カツラ「すごく美味しいねここの料理。」
ララ「ええ。ミシュランにも載ってるらしいわ。」
カツラ「へぇ~。」
ララ「安くはないけど、予約制だから混まないし落ち着いてるから好きなの。それに子供連れでも安心だし。」
ララ「(カツラさんの腕時計、ローガンのと同じ・・・。あれブランド物だし結構高かったって言ってたわよね・・・。)」
ララ「(デートなのに私・・・またローガンのこと考えちゃってる・・・・。)」
カツラ「最初のデートだからてっきり二人きりだと思ってて、君が子供抱いてるの見たときは正直ビックリしちゃったよ。」
ララ「ごめんなさい。私・・・この子のことも紹介したかったから・・・。」
カツラ「いや、勝手に勘違いした僕が悪いんだ。君のせいじゃないよ。」
ララ「・・・・。」
カツラ「それにしても、かわいいお子さんだね。」
ララ「3歳になったばっかりなの。」
カツラ「へぇ~。君にはあまり似ていないね。パパ似なのかな。」
ララ「そうね・・・。よく言われるわ。」
ララ「カツラさんはバツイチって言ってたけど、別れてどのくらいになるの?」
カツラ「まだ2ヶ月くらいかな。子供は元嫁が引き取ることになったから、住んでた家は彼女に譲ったんだ。」
ララ「そうなの・・・。」
カツラ「お金もあまりないからね、引っ越してきたこの街でワンルームのマンション住まいだよ。」
ララ「それは大変ね・・・。」
カツラ「まぁ、僕が悪いからね。」
カツラ「あまり育児に積極的ではなかったし、仕事にばかり追われていたからね。」
ララ「そうなの・・・。」
カツラ「今は新しい職場でのんびりやっているよ。第二の人生って感じかな。」
ララ「仕事は大事だけど、自分の人生のほうがもっと大切よね。」
カツラ「今ではそう思えるよ。」
カツラ「それにしてもホントに美味しいな。ここはランチもやっているの?」
ララ「ええ、そのはずよ。ランチは予約しなくても入れたと思うわ。」
カツラ「よかった。職場がこの近くだから今度同僚と来てみるよ。」
ララ「(いい人そうでよかった。でも・・・・気になっていることがもうひとつあるのよね・・・。)」
ララ「(あそこの席にいるご夫婦って・・・ローガンの両親よね・・・?さっきお母様と目が合ったし、あとで挨拶したほうがいいかしら。)」
ユウナ「ねぇシン。あそこにいるの、お隣のララちゃんよね?帰ってきてるとは聞いてたけど、会ったことはなかったのよね。」
シン「そうか。俺も会ったことはないな。両親とは一緒に住んでいないんだろう。」
ユウナ「相変わらず綺麗な子よね。旦那さんとお子さんかしら?」
シン「かもしれないな。」
ユウナ「かわいい女の子ね。ローガンの子供の頃を思い出すわ~。なんだかちょっぴり似ていると思わない?」
シン「そうか?まぁ、ララちゃんに似ていたらもっと美人だっただろうな。」
ユウナ「もうあなたったら。ホント面食いよね。」
カツラ「聞いてもいいかい?」
ララ「なぁに?」
カツラ「君はいつ離婚を?」
ララ「・・・離婚はしていないわ。私、シングルマザーでこの子を産んだから。」
カツラ「そうなのか・・・。父親は?なぜ結婚しなかったんだい?」
ララ「・・・ごめんなさい。子供の前でこの話はしたくないの・・・。また今度でもいいかしら?」
カツラ「・・・そうだね。すまない。」
ララ「いいえ。私こそごめんなさい。」
ララ「カツラさんは・・・?離婚の理由を聞いてもいい?」
カツラ「ああ、さっきも言ったけど、僕が仕事に追われていてね。あまり家族との時間を作れなかったんだ。」
ララ「そう。お子さんはおいくつなの?」
カツラ「君の娘と同じ、3歳だよ。」
ララ「・・・この子の名前はアンドレアよ。」
カツラ「そうだったね。」
ララ「・・・・。」
カツラ「すまない、正直に言うよ。僕は子供があまり好きじゃないんだ。」
ララ「そうかなって少し思った。」
カツラ「それもあって、育児にも協力的にはなれなかった。元々子供は欲しくないと思ってたんだけど、彼女がどうしても産みたいっていうから結婚することになったんだ。」
ララ「そう・・・。最近は子供を作らない夫婦もいるものね。」
カツラ「うん。」
アンドレア「ママ。」
ララ「どうしたの?アンドレア。」
アンドレア「この人パパ?」
ララ「え?」
カツラ「僕は君のパパではないよ。」
アンドレア「違うのぉ?」
ララ「ごめんなさい・・・。この子若い男性をすぐパパって呼ぶの。」
カツラ「きっと父親が恋しいんだね。」
ララ「そうみたい・・・。」
アンドレア「ママうしゃぎしゃんは?」
ララ「あら?おうちに置いてきたんじゃないかしら?」
アンドレア「アンちゃんのうしゃぎしゃ~ん。」
ララ「ごめんね。もう少ししたらおうちに帰りましょうね。」
アンドレア「はぁ~い。」
カツラ「僕は彼女の父親にはなれないけど、君とはまた会いたいと思ってるよ。」
ララ「・・・ありがとう。」
カツラ「今度はふたりっきりでもいいかな?」
ララ「ええ。」
カツラ「君はお酒は飲めるの?」
ララ「ええ。飲むのは久しぶりだけど。」
カツラ「じゃあ今度はバーにしよう。素敵なお店を見つけたんだ。」
ララ「そうなの。」
ラッキーパームス。
深夜。
アイビーがデスクで本を読んでいる。
アダムはベビーベッドで静かに寝ていた。
波の音がかすかに聞こえてくる中、近くの駐車場で車のエンジン音がした。
アイビー「(ローガン帰ってきたのかな・・・。2時か・・・最近帰り遅いな。)」
アイビー「(昨日は脱ぎ捨てた服から香水の匂いがした・・・。毎晩女の人のところに行ってるのかも・・・。)」
アイビーが椅子から立ち上がり、部屋の明かりを消す。
階段を降りるとちょうどローガンが玄関から入ってくるところだった。
アイビー「おかえりローガン。遅かったね。」
ローガン「悪い。起こしたか?」
アイビー「ううん、眠れなくて本読んでた。お酒飲んできたの?」
ローガン「ああ。お前も飲むか?」
キッチンへ向かったローガンが冷蔵庫を開ける。
アイビー「いらない。」
ローガン「コーヒー淹れるか?」
アイビー「ううん。眠れなくなるからジュースにする。」
ローガンがテーブルにビールとオレンジジュースを置く。
アイビー「まだ飲むの?お酒の匂いするけど、結構飲んできたんじゃない?」
ローガン「悪いか?」
アイビー「今日はもうやめといたら?」
ローガン「・・・・。」
アイビー「最近毎晩飲んでるみたいだし、体に悪いよ。たまには休肝日作らないと。今日はもうお水だけにしといたほうがいいよローガン。」
ローガンがひとつため息をつく。
ローガン「・・・・わかったよ。」
ローガン「お前、いつから俺の母親になった?」
アイビー「私は家政婦だから、ローガンの体調も管理してるの。」
ローガン「なるほど。」
アイビー「・・・・。」
アイビー「最近のローガンちょっと変だよ?なにかあった?」
ローガン「なにもねぇよ。」
アイビー「仕事も朝早いのに毎晩お酒飲んで遅くに帰ってくるし・・・。」
ローガン「忙しくてストレス溜まってるんだよ。」
アイビー「別に女の人と会ってることはなにも言わないけど、お酒は体にもよくないから・・・。」
ローガン「わかってるって。」
アイビー「・・・ショアでなにかあったの?」
ローガン「なんでそう思う?」
アイビー「だって・・・ショアに行った後だもん。こんな風になったの。」
ローガン「・・・・。」
アイビー「結婚式だったんだよね?」
ローガン「ああ。」
アイビー「ディーンも一緒だったんだよね、たしか。」
ローガン「そうだ。」
アイビー「・・・・。」
ローガン「お前さ。」
アイビー「 ? 」
ローガン「ララとジーンさんが結婚したの知ってたのか?」
アイビー「え・・・?」
ローガン「高校のときつきあってたよな、ジーンさんと。」
アイビー「・・・・。」
ローガン「その反応じゃ、知らなかったか。」
アイビー「ララとはほとんど連絡とってないし・・・たまにララからメールは来るけど・・・。」
ローガン「そうか。あいつも言い出しづらいよな、お前の元彼じゃあ。」
アイビー「・・・・。」
ローガン「公園で娘と3人、絵に描いたようなファミリーだったぞ。」
アイビー「(アンちゃんのことだよね・・・。)」
ローガン「お前が憧れてるのはああいうのだろう?俺とみたいな疑似家族じゃなくて。」
アイビー「疑似って・・・・。」
ローガン「まぁそもそもアダムはお前の子供でもないしな。」
アイビー「・・・・。」
ローガン「・・・・。」
アイビー「ねぇローガン。」
ローガン「なんだ。」
アイビー「もし私じゃなくてララだったら?」
ローガン「・・・・?」
アイビー「ララが子供と二人で困ってたら、今の私にしてくれたようにあなたは手を差し伸べたでしょう?」
ローガン「・・・どういうことだ?」
アイビー「例えばの話。あなたはそういう人だよ、ローガン。」
アイビー「もう寝るね。おやすみ。」
ローガン「・・・・。」
ローガン「・・・・。」
0 件のコメント:
コメントを投稿