前へ進め！

レオン「もう帰るのか？両親も兄貴たちも帰るの明日だから、もっとゆっくりしていってもいいのに。」

リア「そういうわけにはいかないよ。」

レオン「送っていくか？」

リア「タクシー呼んだから大丈夫。それに、行きたいところがあるから。」

レオン「そっか。気をつけてな。」

リア「うん。泊めてくれてありがとう。」

レオン「ああ。」

リア「・・・じゃあ。」

レオン「ああ。じゃあな。」

リア「うん。お邪魔しました。」

レオン「おう。」

リアが玄関のドアを開けて出て行く。

迎えに来ていたタクシーに乗り込む。

リア「　（またね、なんて言わない・・・。連絡先だって、交換しなかったし。・・・わかってる、お互いに一夜限りの関係だって。きっと私たちは似てるのかもしれない。）　」

リア「　（結局名前、聞いたのに思い出せないや。まぁいっか。もう会うこともないし。）　」

街中でタクシーを降りたリアが一軒の店の中へと入っていく。

店員「こちらへどうぞ～。」


店員に案内され、店の奥へと入っていく。

店員「こちらの席にどうぞ～。」

リア「はい。」

店員「それで？今日はどうしますか～？パーマとか？」

リア「バッサリ切っちゃってください。」

店員「え？ショート？」

リア「はい。」

店員「え～。すごく綺麗な髪なのにもったいなくないですか～？」

リア「いいの。私、変わりたいの。」

店員「イメチェンってやつ？」

リア「そう。思いっきり変えたいから。」

店員「そういうことならまかせといて～！」

リア「私に似合う髪形でおすすめとかあります？」

店員「お客さんパーマかけてますよね？元はストレートでしょ？」

リア「そう。」

店員「切ったらストレート出ると思うんだけど、ワックスでふんわりさせたらいい感じにボリューム出ると思うから、パーマはなしでカットだけにするね。」

リア「任せるからお願い。」

店員「了解！それにしても、お客さん綺麗な目の色してるね～。髪の色にすごく合ってる。髪も地毛でしょ？綺麗な色～。」

リア「あ・・・ありがとう・・・。(ママと同じ瞳の色がイヤでずっとコンタクトしてたのに・・・あの人以外にも褒めてくれた人がいた。）」

数時間後。
リアが店から出てくる。


店員「ありがとうございました～。」

リア「　（変わる。私、今日から生まれ変わるんだ。）　」

リア「　（これからは自分のために生きる。ローガンにも、あの人にも感謝しなくちゃ。）　」

リア「　（前に進まなきゃ。とりあえず仕事探さなきゃだよね。）　」

４ヵ月後。
７月に入り、スターライト　ショアは暑い日が続いていた。

リサ「帰ってるならもっと早く連絡くれればよかったのに～。」

リア「こっちにいると思わなくて。だってリサずっとショア出たいって言ってたじゃない。」

リサ「結局出るタイミング逃しちゃったのよ。」

リサ「向こうでショップ店員やってたんでしょ？こっちでもそうなの？」

リア「ううん。アパレルって歩合制だったりするから結構シビアなんだよね。そういうストレスに追われるのもいやだから、今は派遣で働いてるんだ。」

リサ「事務系？」

リア「そう。」

リア「ある程度貯金もたまったし、そろそろ家出ようと思ってるの。」

リサ「え～。実家のほうがラクじゃない？」

リア「あの家にいたくないんだ。」

リサ「あいかわらずね～、あんたも。」

リア「それで家探そうと思ってるんだけど、やっぱり敷金とか高いから。どっかいい不動産知らない？」

リサ「不動産ね～。敷金礼金ないところがいいの？」

リア「うん。部屋は狭くてもいいから、綺麗でできれば家賃も安いところがいいんだよね。」

リサ「そんな都合のいいところないわよ～。」

リア「やっぱりそうだよね～。」

リサ「あ～でも・・・なくもないか・・・。」

リア「え？いい部屋知ってるの？」

リサ「う～ん・・・・。私の住んでるシェアハウスなんだけど。」

リア「リサ、ルームシェアなんてやってたの？」

リサ「まぁね。２ヶ月前に住人が一人引っ越していったから、今一部屋空いてるのよね。」

リア「へぇ～。何人で住んでるの？」

リサ「私ともう一人よ。部屋は３部屋あるの。」

リア「へぇ～。」

リサ「もし住むなら紹介料として家賃の半月分、私に払ってくれれば紹介してあげるわよ？」

リア「家賃はいくらなの？」

リサ「一人４万。光熱費も入れて４，５万。」

リア「へぇ～。安いね。」

リサ「まぁね。」

リア「興味あるな。見てみたい。」

リサ「もちろんいいわよ。」

リア「もう一人の住人も女？」

リサ「男よ。元々ずっと前からシェアハウスとして使ってた家だから、誰かが出たら誰か入るって感じで、引っ越していった人も男だったわ。」

リア「へぇ～。」

リサ「いつ見に来る？」

リア「早いほうがいいな。今日このあとは？」

リサ「私このあと飲みに行く約束してるのよ。明日ならいいわよ。」

リア「リサは明日休み？」

リサ「土日は休みなんだけど、学園祭近いから明日は部活に顔出さなきゃいけないの。夕方には帰るからそのあとでもいい？」

リア「私はいつでも大丈夫だよ。」

リサ「そう。じゃあ明日帰る前に連絡するから、待ち合わせしましょ。」

リア「うん。」

翌日。


リサ「遅くなってごめんね～。待ったでしょ？」

リア「大丈夫。」

リサ「ここよ。」

リア「３階建てなんだ？」

リサ「そう。バスルームは２階だけど、部屋は各階に一部屋づつあるから、プライベートもしっかり守れるわよ。」

リア「お邪魔しま～す。」

リサ「どうぞ～。適当に座ってて。コーヒーでいい？」

リア「うん。ありがと。」

リア「なんか思ってたのとちょっと違った。」

リサ「そう？どういうのを想像してたわけ？」

リア「シェアハウスってもっとこう・・・デザイナーズっぽいお洒落な家なのかと思ってた。」

リサ「ふふっｗ　ここは昔から貧乏な若者が集うシェアハウスなのよ。そんな感じで住人もよく変わるから、家具もずっとあるものを使ってるの。」

リア「ふぅ～ん。」

リサ「それよりあんた、家族には話したの？家出ること。」

リア「別に。ママも妹も自分のことでいっぱいいっぱいだから、私のことなんてどうでもいいと思う。」

リサ「そう。変わらないのね。」

リア「まぁね。そんなもんでしょ。」

リサ「ふふっｗ」

リア「家誰もいないの？もう一人の人は？」

リサ「寝てるんじゃないかしら。バーテンだから、いつもこの時間に部屋から出てくるのよ。」

リア「へぇ～・・・。」

リサ「シェアって言っても仕事の時間合わないと一日顔合わせない日もあるのよ。」

リア「そうなんだ～？」

リア「もう一人の人はどんな人なの？」

リサ「気になる？」

リア「そりゃあ・・・一緒に住むことになるかもしれないんだし。」

リサ「無口な男よ。人のことに興味ないみたい。彼にはあまり干渉しないほうがいいわ。」

リア「怖い人なの？」

リサ「ある意味怖いかもね。」

リア「ふぅ～ん・・・。」

リア「リサって美術の先生やってるんだよね？」

リサ「ええ。高校でね。」

リア「恋人いないって、この前言ってたよね？その外見じゃどう見ても教師ってカンジじゃないし、高校生に言い寄られたりしない？」

リサ「クソガキなんかに興味ないわよ。私って大人の男が好きなの。」

リア「そういえば高校のときも不倫してたよね。」

リサ「ふふっｗ　そんなこともあったわね。あんたは？職場にいい男いないの？」

リア「う～ん、今のところはおじさんか派遣社員ばっかりだし。しばらくは独りを楽しみたいから。」

リサ「遊びたい、ってことね。」

リア「そういうんじゃないけど・・・。」

リサ「あら？違うの？せっかくナンパされにクラブ行こうって誘うつもりだったのに。」

リサの携帯電話が鳴る。


リサ「あ、ちょっとごめん。」

リア「うん。気にしないで。」


リサが立ち上がり電話に出る。

リサ「もしもし？・・・・あら、久しぶりね。元気してた？」

リア「・・・・。」

リサ「あ～すっかり忘れてた。そういえばそんなの借りてたわね。あるかどうか、ちょっと探してみるわ。」


電話をしながらリサが階段を上がっていく。

３０分後。


リア「　（全然戻ってこないんだけど・・・。リサ、相変わらずだな～。あの子電話すると長いんだよね・・・。）　」

階段を下りてくる足音が聞こえる。


リア「あ、やっと戻ってきた。も～リサ遅・・・。」

男「・・・・。」

リア「あ・・・・。（リサじゃない・・・って、なにこのイケメン！！）　」

男「・・・・誰？」