Blue sky -sims3 story- へようこそ。
このブログはElectronic Arts社から発売されているPCゲーム「ザ・シムズ3」を使用したドラマ形式のストーリーブログです。
個人のファンサイトですのでEA社とは一切関係ありません。

〈 注意!〉
作中には卑猥な表現、画像も含まれております。
苦手な方はどうぞお引き取り願います。

2018/10/07

親子






J「ただいま。」


玄関が静かに開いてJが帰宅する。












アイビー「パパ、おかえりなさい。」

J「ああ。お前も、よく帰ってきたな。」












J「その子は?」

アイビー「パパ、帰ってきたばかりでごめんなさい。聞いてほしい話があるの。」












J「・・・わかった。」












全員分の紅茶を用意して、サムが少し離れた席に着く。
それを待ってからアイビーが重い口を開いた。












アイビー「いつか言わなきゃってずっと思ってたんだけど、なかなか言い出せなくて・・・。」

J「・・・・。」

アイビー「この子の名前はアダム。」











アイビー「ロミオと・・・半年前に亡くなった、女優のミランダさんとの間に産まれた子供なの。」












クレア「ミランダ・・・?あの、ミランダ・レッドってこと?」

アイビー「そう。」

J「誰だそれは。有名な女優なのか?」

クレア「アカデミー賞もとった、実力派女優よ。」

J「そうなのか。なぜそんな女優がロミオくんと・・・?」












アイビーがこれまでのいきさつをゆっくりと語り始める。

3人はそれを静かに聞いていた。












アイビー「産まれてからしばらくは、保育器の中で育ったの。やっと退院できたのが3月末。」

クレア「それからずっと、あなた一人で育ててきたの?」












アイビー「ううん。私一人じゃ到底無理だったから、ベビーシッターさんを雇って、仕事の間は見てもらってるの。それでもやっぱり、夜も眠れない日が多くて・・・ひと月前からは週に3日、リリィ社長とアンナさんに預けてるの。」

クレア「・・・・。」











アイビー「でも、このままだとアダムにとって、私はママの役割を果たせていない。子供にとっては、一番近くに居ていつも見守ってあげるのが母親の務めでしょう?」

クレア「・・・そうね。」












アイビー「だから私、仕事を辞めて育児に専念することに決めたの。」

J「・・・・。」












サマンサ「辞めるって・・・モデルの仕事を?(アイビーちゃん、今一番売れてる時期なのに・・・。仕事だって、半年先のスケジュールも埋まってるんじゃ・・・。)」













J「なにもお前が育てる義務はないだろう。」













クレア「ママもそう思うわ。事務所の社長さんは、育てるって言ってくれたんでしょう?」













アイビー「でも私、ミランダさんと約束したの。この子を立派に育ててみせるって。」











アイビー「ミランダさんだって、私だからアダムを託してくれたの。」













アイビー「それに・・・私にとってこの子は唯一、ロミオの残してくれた形見なの。ミランダさんにとっても・・・孤児院で育った二人の、唯一の肉親なの。」












J「・・・その子には身体に障害が残る可能性が高い。母親が心臓が悪ければ、遺伝している可能性もある。」

アイビー「・・・・うん。」

J「その子が健康に育ったとしても、これからの将来、いろんな苦難が待ち構えていることは目に見えている。それに生まれてきた境遇も・・・いつかその子にとっては障害になるかもしれん。」












アイビー「わかってる。だから、芸能の世界とは程遠い静かなこの街で育てたいの。そして、二人にも協力してほしい。」

J「・・・・。」

アイビー「私の一生のわがままを聞いてください。ここで、私とアダムが暮らすことを許してほしいの。」











J「ダメだ。ここでお前たちが暮らすことは許さん。」

アイビー「パパ・・・。」

J「話は終わりだ。明日の朝になったらブリッジポートへ戻って、その子を社長さんへ返してきなさい。」


Jが立ち上がる。








アイビー「待ってパパ!」


アイビーが立ち上がる。


アイビー「アダムは私の子供よ!だから・・・」










J「お前の子供?!その子をよく見ろ!肌の色も、瞳の色も違う。お前の血は一滴も通っていない、赤の他人の子供だ。」

アイビー「でも・・・っ!」

J「お前は騙されているのがわからんのか!浮気した男がよそで作った子供だろう!なぜ妻でもないお前が育てる必要がある!」











アイビー「わかってるよ・・・。でも・・・二人の関係はずっと昔から続いてたの。お互いにとっては家族であり恋人であり、姉弟みたいなものなの。」












J「お前はいいように言いくるめられてるんだ!そんな不純な関係を、なに認めたようなことを言っているんだ?!」

アイビー「でもっ・・・。」











アイビー「パパは・・・もし私がよその子供だったとしたら育てなかった?」

J「そんな例えは意味がない。お前はれっきとした私の娘だ。」

アイビー「この子だって、私は私の子供としてちゃんと育てたいの。」










J「ダメだ。うちの子だなんて認めん。お前の養子にするというならこの家から縁を切れ。」

クレア「あなた・・・っ。」

J「私は本気だ。」










アイビー「もういいっ!じゃあそうするよ!!」












アイビーが荷物を持って駆け出す。


クレア「アイビー!」

サム「アイビーちゃん・・・っ。」

J「追わんでいい。」











J「放っておけ。そのうち目が覚める。」













クレア「・・・・。」


























真っ暗な公園でひとり、アイビーがベンチに腰かけている。
もう長い時間そうしていた。
蒸し暑い夏の夜、生ぬるい風が吹く。












アイビーの頬を涙が伝う。


アイビー「(わかってくれなんて・・・私のわがままなのかな。)」











アイビー「(でも・・・私を育ててくれたパパとママだから、ちゃんと話し合えば理解してくれると思ってた。)」











アイビー「ひっく・・・(誰にも理解されないのかな・・・。ホントに・・・アダムを育てることは、私のエゴでしかないのかな・・・。)」


アイビーが声を漏らして泣き始める。












アイビー「ふぇ・・・・っ(私・・・どうしたらいいんだろう。仕事を辞めて、一人で育てる?・・・誰もいない田舎の町にアダムと二人で引っ越す?)」












アイビー「ひっく・・・・うぇ~ん・・・(私にそんなことできるかなぁ・・・・。こんなに寂しい思いを・・・これからずっと・・・耐えられる・・・?)」


アイビーのすすり泣く声を聞いて、近くを通りかかった人物がふと足を止める。









アイビー「ひっく・・・・。」

ローガン「・・・アイビーか?」













アイビー「え・・・?」


アイビーが顔を上げる。

















ローガン「まさかと思ったけど、やっぱりそうか。」

アイビー「ローガン・・・?」













アイビー「・・・なんで・・・こんなところに?」













ローガン「こっちのセリフだ。」

























サマンサ「も~、ホントに大変だったんだから~。」

ネオ「ごめんごめん、部下のミスのカバーしてたらこんな時間になっちゃって。」

サマンサ「そうなんだ?それはご苦労さまだったね。」











ネオ「で?なにが大変だったんだ?」


ネオからジャケットを預かって、サムがクローゼットに仕舞う。


サマンサ「今日ね、アイビーちゃんが来る予定だったでしょう?」









ネオ「そういえばそうだったな。アイビーはどうしたんだ?」

サマンサ「パパさんとケンカしちゃって、家を飛び出して行っちゃったのよね。」









ネオ「あのふたりがケンカ?珍しいな。」

サマンサ「うん。」











サマンサ「さっきからアイビーちゃんに電話してるんだけど・・・充電切れてるみたいで繋がらないのよね。無事に帰っていればいいんだけど・・・。」











ネオ「無事って・・・いい大人なんだから、電車で帰ってるだろう。」










サマンサ「それが一人じゃないのよ。」

ネオ「なんだ・・・恋人でも連れてきたのか?」

サマンサ「ううん。赤ちゃんを連れてきたの。ロミオさんの子供だって・・・自分が育てるんだって。」










ネオ「ロミオさん・・・?ロミオさんは亡くなっただろう?去年の9月に。」

サマンサ「でも子供ができてたらしいの。他の女性との間に。」

ネオ「・・・・。」









サマンサ「それでパパさんが怒っちゃって・・・。」





























ドレッサーからクレアが立ち上がる。

Jはソファーに座って医療書を読んでいた。











クレアがゆっくりとソファーに座る。


クレア「J。」

J「なんだ?」














クレア「まだ怒ってるの?」

J「怒ってなんかない。」

クレア「・・・・。」











クレア「私は・・・わからなくもないわよ・・・。あの子の気持ち。」











J「・・・・。」

クレア「優しい子だもの。責任感が強くて、頑固で・・・独りで抱え込む。」












クレア「あなたにそっくりよ。」











J「・・・・。」












クレア「あの子がわがままを言ったのはこれでたった2回よ。1回目はモデル事務所に入るとき。でもきちんとあなたの言った掟を守ったし、まっすぐに育ってくれた。」












J「クレア。」

クレア「なぁに?」

J「俺は間違ってると思うか?」











クレア「・・・わからないわ。」













J「・・・・。」















J「先に寝るよ。おやすみ。」

クレア「・・・おやすみなさい。」






























クレア「・・・・。」























0 件のコメント:

コメントを投稿