ブリッジポートには相変わらず雨が降り続いていた。
アイビーがメイクルームへと入っていく。
アイビー「おはよ~。」
マロン「あ、おはよ~アイビーちゃん。」
ジーン「おはよう。」
アイビー「二人ともなに見てるの?」
マロン「BiBiの9月号。ゆうべ届いたの。」
アイビー「そっか、今日発売日だっけ。」
ジーン「ウエディング特集、すごく綺麗だよ。」
マロン「編集部に問い合わせがすごいってさっき連絡あったよ!アイビーは式ではどのドレス着るのかって。」
アイビー「そうなんだ・・・?」
マロン「式の日取りは決まった?」
アイビー「まだ・・・。両親への挨拶もまだ行けてくなくて。」
マロン「そうなんだ?忙しいもんね二人とも。」
アイビー「うん・・・。」
マロン「ほら。アイビーちゃんもまだ見てないでしょ?」
マロンが雑誌を手渡す。
アイビー「あ・・・うん。」
アイビーが雑誌を手に取りページを開く。
自らの着たウエディングドレス姿が並ぶ。
アイビー「・・・・。」
一瞬だけアイビーの表情に暗い影が落ちる。
ジーン「・・・・。」
アイビー「なんか・・・自分じゃないみたい。」
マロン「アイビーちゃんはどっちかというとクール系が多いもんね~。」
アイビー「うん。・・・今日、早く帰りたいから急いでもいいかな?」
マロン「全然大丈夫だよ~。」
マロン「じゃあすぐにメイクはじめちゃうね~。」
アイビー「お願いします。」
マロン「は~い。」
マロン「引越しはもう片付いたの?」
アイビー「うん。だいぶ。」
マロン「そっか~。落ち着いたら遊びに行きたいな~。ロミオちゃんの自宅行ったことないんだよねw」
アイビー「是非遊びに来て。」
店のドアが開いて鈴の音が鳴り響く。
マスター「いらっしゃい。」
ロミオ「忙しそうだな。」
マスターが顔を上げる。
マスター「あら、ロミ・・・。」
マスター「 ! 」
マスター「ロミオ・・・・歩いてきたの?」
ロミオ「いや、タクシーだ。外大雨だしな。」
マスター「そう・・・。」
ロミオ「忙しいなら出直すよ。」
マスター「待ってロミオ。」
マスター「大丈夫よ。今日は私がおごるから、ここで飲んでいきなさい。」
ロミオ「珍しく気前がいいな。なにかいいことでもあったのか?」
マスター「そんなようなものよ。」
ロミオ「そういうことなら遠慮なく飲ませてもらおうか。」
マスター「ええ・・・。なんなら朝まで付き合うわ。」
ロミオ「今日はいやに混んでるな。」
ロミオがテーブルに着く。
マスター「ドラマの打ち上げとかで俳優や業界人がなだれ込んできたのよ。忙しいったらありゃしないわ。」
ロミオ「店員雇ったほうがいいんじゃないか?」
マスター「そうね。そろそろ雇おうかしらね。」
ロミオ「そうしろ。」
マスター「 (嫌な予感がするわ。ずぶ濡れだったし、手になにか持ってた・・・。とにかく、朝まではここから出さないようにしないと・・・・。あとで結界を強めておくべきね。) 」
数時間後。
あいかわらず店の中はざわついている。
奥のVIPルームからは笑い声が絶えない。
マスター「アイビーに話したのね。」
マスター「よくやったわ。ただ途中で逃げたのはどうかと思うけど。」
ロミオ「・・・・。」
マスター「でも、彼女にも一人になって考える時間は必要だわ。それにあの子のことだもの。言わなくてもあなたが迷っていることはわかっているはずよ。」
ロミオ「・・・・。」
マスター「少し時間を置いてまた話すべきね。じっくりと二人で。」
ロミオ「・・・・そうだな。」
マスター「どうせ帰るつもりないんでしょう?今日はここに泊まって行きなさい。」
ロミオ「・・・・。」
マスター「酔いつぶれてあなたを泊めたことなんて、昔はしょっちゅうだったものね。それにこの有様だもの。明日店の片づけを手伝ってほしいし。」
ロミオ「・・・・いいのか?」
マスター「なにが?」
ロミオ「あんたのことだから、どうせ今日も説教されるのかと思ってたよ。今すぐ帰って話し合えってな。」
マスター「気持ちの整理をしないまま話し合ったって前に進まないわよ。あの子だってまだ混乱してるはずだわ。」
ロミオ「・・・・そうだな。」
マスター「今回の場合は、ミランダとのことはすでにわかりきっていたこと。妊娠した、これだけの情報でもう十分でしょう?」
ロミオ「・・・・。」
マスター「泊まっていくことは私からあの子に連絡しておくわ。もう少し客が引いてからになるけど。」
マスター「その間にあなたも、もう少し自分の頭の中を整理するべきね。あの子の答えを待つだけじゃなくて。」
ロミオ「・・・・。」
マスター「責任はあなたにあるんですもの。それにミランダから決断を委ねられたのはあなたよロミオ。結局はあなたが決めなくちゃいけない。」
ロミオ「・・・・わかってる。」
マスター「一人になりたいなら先に二階へあがっていいから。食べ物もあるから適当に食べてちょうだい。」
ロミオ「いや・・・・もう少し飲ませてくれ。」
マスター「はいはい。仰せの通りに。」
どしゃぶりの雨の中、車から降りたディーンが玄関へと駆け込む。
ディーン「ただいま~。(ガレージから入れるドアほしいな。この雨じゃ車からの距離でも結構濡れる・・・。) 」
ディーン「ラトー。(いつもならキッチンで夕飯作ってる時間なのに・・・。) 」
ディーンがリビングへと入る。
ディーン「ん?」
ふとテーブルの上のDVDに目がいく。
ディーン「げっ・・・・。」
ディーン「 (こ・・・これは・・・・今度こっそり見ようと思って買っておいたハサウェイちゃんの新作DVD・・・。これがここにあるってことは・・・・・ラトにあの箱見つかったのか・・・・。) 」
ディーン「 (マジかよ・・・・。ていうかどうする?!まさかラト・・・・怒って実家帰っちゃったとか・・・・。) 」
ディーン「 (やばい・・・マジでやばいぞ・・・。ラトの両親になんて言い訳すれば・・・。お義父さんならわかってくれそうだけど、ラトのお義母さん、怖そうなんだよな~・・・。) 」
ディーン「ラトー・・・・。(ああどうしよう・・・・。) 」
ディーンが寝室へと入る。
ディーン「ラト・・・・?」
ディーン「え・・・ちょ・・・・。」
ラトーシャ「おかえりディーン。」
ディーン「え?その格好・・・・どうし・・・・。」
ラトーシャ「見たの・・・・あのDVD。」
ディーン「え・・・・。」
ラトーシャ「ディーン・・・隠れてああいうの見てたって知らなくて。」
ディーン「ご・・・ごめん。あれは同僚に借りたやつで・・・。」
ラトーシャ「いいの。言い訳しなくても。」
ラトーシャ「ディーン、ああいうのが好き・・・なの?」
ディーン「いや・・・それは・・・その。」
ラトーシャ「ホントのこと言ってほしい。」
ディーン「はい・・・・すいません。大好きです。」
ディーン「ラト、怒ってる?」
ラトーシャ「怒ってないよ。」
ディーン「ホントに・・・?」
ラトーシャ「うん。むしろ・・・・私こそ・・・・もっとちゃんとそういうの勉強しなきゃって・・・・。」
ディーン「え?」
ラトーシャ「ディーンが好きなら・・・・私も、努力しようって思うから・・・・。だから・・・・あのDVD見て研究しようかと思って・・・・。」
ディーン「マジで・・・?」
ラトーシャ「うん・・・。ごめんなさい。勝手に中身見て。」
ディーン「その格好ってもしかして・・・・。」
ラトーシャ「うん・・・・。DVDでこういうの着てるシーンがあったから・・・・。その・・・格好から入ったほうがいいかと思って・・・・。」
ディーン「・・・・。」
ラトーシャ「即日お届けのネットショッピングで買っちゃったの・・・・。そしたらさっき届いたから・・・・着てみたんだけど・・・・。」
ディーン「・・・・。」
ラトーシャ「どう・・・かな・・・・?」
ラトーシャ「きゃっ!」
突進してきたディーンがラトーシャをベッドに押し倒す。
ラトーシャ「ディ・・・ディーン?」
ディーン「ラトが悪い。」
ラトーシャ「え?」
ディーン「その格好は反則。俺のこと挑発してるようにしか見えないぞ。」
ラトーシャ「挑発って・・・・。」
ディーン「もうムリ。」
ラトーシャ「あっ・・・・。」
突然首筋を甘噛みされてラトーシャが甘い声を出す。
ディーン「タガが外れた。」
ラトーシャ「え・・・?」
ディーン「ああもう・・・たまんねぇ。俺の奥さんかわいすぎ。」
ラトーシャ「ディーン・・・・?」
ディーン「今日はもうこのまま離さないから。」
ラトーシャ「ちょ・・・・ご飯は?おなかすいてないの?」
ディーン「これからラトをおなかいっぱいいただくから。」
ラトーシャ「そんなんじゃおなかいっぱいにならな・・・んっ・・・・。」
ディーン「ラト・・・これ着たまましてもいい?」
ラトーシャ「え・・・でも、脱いだほうが動きやすいんじゃ・・・。」
ディーン「違うんだよ。着たままだから興奮すんの!」
ラトーシャ「そ・・・そうなの?」
ディーン「次俺に選ばせて、コスチューム。」
時刻は深夜を回っていた。
あいかわらず雨は降り止まない。
マスター「一向に終わらないわね。奥の宴会。」
ロミオ「・・・・。」
マスター「あの連中さえ帰ってくれれば落ち着くのに・・・。」
ロミオ「それが客に言うことか?」
マスター「店側の愚痴なんてだいたいこんなものよ。」
ロミオ「まぁそうだろうな。」
マスター「それにあの連中は業界人ってだけで悪いこともたくさんしてる。偉そうな顔したバカな連中ばかりよ。」
ロミオ「じゃあなぜ入れてる。」
マスター「しょうがないわ。こういう仕事をやっているとね、良いものも悪いものも惹きつけてしまうの。店とは関係なく、能力者なんてそういうものよ。」
ロミオ「・・・・俺の未来は見えるか?」
マスター「・・・・いいえ。」
ロミオ「何故だ。」
マスター「わからないわ。」
ロミオ「・・・・。」
マスター「未来は自分で切り開くものよロミオ。」
ロミオ「・・・・。」
マスター「結果がどちらに転んでも、それを受け入れて前に進むのよ。」
ロミオ「もしあいつが離れていったら・・・?」
マスター「受け入れるしかないわね。あなたが招いた結果でしょう?」
ロミオ「・・・・。」
ロミオ「・・・・怖いんだよ俺は。」
マスター「・・・・。」
ロミオ「あいつを失いたくない・・・・・。もうこれ以上大事なものを失いたくないんだ・・・・。」
マスター「とうとう本音が出たわね。いい兆候だと思うわ。」
ロミオ「・・・・。」
マスター「当たって砕けなさいよ。自分の口からあの子にそう言っておやりなさい。それから二人でどうするべきか話し合うのよ。」
客「マスター!氷が足りねぇぞ~!」
店の奥から男の怒号が響く。
マスター「はぁ~い。今行くわ!・・・まったく、さっさと帰ればいいものを。」
ロミオ「ふっ・・・・。」
マスター「雨、いつまでも止まないわね。(客が帰らないおかげで結界を強化する暇もアイビーに連絡する時間もありゃしないわ・・・・。) 」
マスター「ロミオ、いいかげん飲みすぎよ。そろそろ二階へ行ってちょうだい。」
ロミオ「まだ飲み足りねぇよ。」
マスター「まったく・・・。すぐ戻るからそこにいてよ?」
マスターが氷を用意するために店の奥へと消えていく。
ロミオ「・・・・。」
ロミオが大きくため息を吐く。
その瞬間に携帯電話の着信音が鳴り響く。
ロミオ「・・・・。」
渋々とポケットから携帯電話を取り出す。
着信画面を見るとアイビーの名前があった。
ロミオ「・・・・。」
しばらく見つめていると着信音が止む。
ロミオ「 (あいつに・・・会わねぇと・・・・。) 」
ロミオがフラフラと立ち上がる。
ゆっくりとした動作でドアへと向かう。
足元はフラフラしていておぼつかない。
どしゃぶりの雨も気にせずにタクシーを探す。
ロミオ「 (あっちの通りのほうがタクシー多いな・・・。) 」
雨で視界が悪い上に、この通りは街灯も少なくかなり見通しが悪い。
ふらついた足取りで道路を横断する。
突然車のクラクションが鳴り響く。
ロミオが後ろを振り返る。
ロミオ「!!」
マスター「ハァ・・・・まったく注文の多い連中だこと。」
ぶつぶつ言いながらマスターがカウンターへと戻ってくる。
テーブルに置かれたドリンクへと目をやる。
グラスの中にはまだ並々とお酒が入っている。
マスター「ねぇ。そこにいた酔っ払い、二階へあがっていった?」
男性客「いや。さっき外へ出て行ったみたいだけど。」
マスター「なんですって・・・?」
男性客「電話が鳴ったあとすぐに出て行きましたよ。」
マスター「ロミオ!!」















































































