ロミオ「今日はこれで終了だ。」
アイビー「お疲れ様でした。」
ロミオ「お疲れ。」
ロミオ「ちょっと待て。」
そそくさとメイクルームへ戻ろうとするアイビーをロミオが引き止める。
ロミオ「最近連絡してこないな。もう乗り換えたのか?」
アイビー「そんなんじゃない。」
ロミオ「ほかのやつと付き合うなら一応報告くらいはしろよ。」
アイビー「そんなんじゃないってば。最近引越しで忙しかったの。」
ロミオ「引越し?聞いてないぞ。」
アイビー「スタジオで会わなかったし・・・私も忙しかったから言う暇がなかったんだもん。」
ロミオ「シェアハウスはどうした?また同じメンバーで引越しか?」
アイビー「ううん。みんなバラバラになっちゃった・・・。」
ロミオ「てことは一人暮らしか?」
アイビー「うん。」
ロミオ「へぇ~。じゃあこれからは男連れ込めるな。」
アイビー「そんなつもりで引越したわけじゃ・・・。」
ロミオ「あいつはもう来たのか?」
アイビー「・・・・・。」
ロミオ「来たんだな。」
アイビー「でもそれは友達として引越し祝いって・・・。」
アイビー「きゃっ!」
突然ロミオがアイビーの体を壁に押し倒す。
アイビー「んっ・・・。」
息もできないくらい激しく唇を塞がれる。
手首が痛いくらいに掴まれて身動きがとれない。
マロン「お疲れさ・・・。」
ドアが開いてマロンとジーンがスタジオに入ってくる。
マロン「?!」
二人の視線がアイビーとロミオに釘付けになる。
マロン「ちょ・・・二人ともこんなところで大胆すぎるよ・・・・。」
ジーン「・・・・。」
アイビー「・・・っ!」
一瞬緩んだロミオの腕から逃れ、アイビーが走り出す。
マロン「アイビーちゃん?」
マロン「ちょっとロミオちゃんっ!追いかけないの?アイビーちゃん、今泣いてたんじゃない?」
ロミオ「・・・・。」
マロン「・・・っもう!アイビーちゃん待ってよ~!」
マロンがアイビーの後を追い駆け出す。
まるで何事もなかったかのように、ロミオがデスクに戻る。
ジーンの横を通り過ぎるときにようやく口を開いた。
ロミオ「お前は追わないのか?」
ジーン「アイビーはあなたに追いかけてほしいと思ってるんじゃないですか?」
ロミオ「さあな。」
ジーン「・・・・。」
マロン「待ってよアイビーちゃんっ!」
アイビー「うっ・・・。」
ようやくアイビーが足を止める。
マロン「もう・・・衣装がびしょ濡れだよ。」
アイビー「ねぇマロンちゃん・・・。」
マロン「うん?」
アイビー「ロミオはもう私のこと好きじゃないのかなぁ?」
マロン「そんなわけないでしょ?」
アイビー「じゃあどうして冷たくするの?」
マロン「・・・・。」
アイビー「もう・・・わかんないよ・・・・。」
マロン「もう、そんなに泣かないの。涙で顔グシャグシャだよ?」
アイビー「うえっ・・・・。」
マロン「引き返すわけにもいかないし・・・。困ったね~・・・。」
アイビー「マスター・・・・シャワー貸してくれてありがとう・・・。」
マスター「いいえ。どういたしまして。」
マロン「その衣装は買い取りだね。」
マロン「ロミオちゃんが冷たくなったのっていつからなの?」
アイビー「ジーンが・・・現れてから・・・かな・・・・。」
マロン「ジーンくんってたしかアイビーちゃんの高校の先輩だっけ?」
アイビー「うん・・・・。」
マロン「ほかにもなにかあるんだね?」
アイビーが昔ジーンと付き合っていたことを話す。
アイビー「でももう昔のことなのに・・・・。」
マロン「そうだねぇ。」
アイビー「ロミオ・・・ホントは私と別れるために冷たくしてるんじゃないかな・・・・。」
マロン「え~。それはないでしょ~。」
アイビー「だって・・・決めるのはお前だって、ずっと言われてるし。私から別れを切り出したほうがロミオはラクだから・・・。」
マロン「そんなめんどくさいこと、いちいちしないよ~。あのロミオちゃんだよ?嫌いになったんならさっさと自分から言うでしょ。」
アイビー「そうかなぁ・・・?」
マスター「ヤマアラシのジレンマね。」
それまで黙って聞いていたマスターが突然口を開く。
アイビー「え?」
マロン「なにそれ?」
マスター「自己の自立と相手との一体感というふたつの欲求によるジレンマ。」
マロン「どういう意味?」
マスター「人間は結局孤独でひとり、彼はそれを痛いほどわかっている。でも誰かとひとつになりたいと願う心がジレンマを起こす。愛するほどに傷つけあうのね。」
マロン「ジレンマかぁ~。」
マスター「嫉妬にかられて暴走してるのよ。きっとこんなにも愛する人ができたのは初めてなんじゃないかしら。」
アイビー「ロミオが・・・嫉妬?」
マスター「彼はずっと孤独で生きてきた人間よ。誰かに愛されるということに飢えている。そしてはじめてお互いに強く愛し合う人ができた。それがあなただったのよ。」
アイビー「・・・・。」
マスター「だから手放したくてももう手放せないの。いままでの自分と変わってしまったことに気づいてもがいているのね。」
マロン「あ、電話だ。きっとロミオちゃんからだよ。」
アイビー「・・・・。」
マロン「ちょっと出てくるね。」
アイビー「うん・・・。」
離れたところでマロンが携帯に出る。
マロン「もしもし?」
ジーン『マロンちゃん?アイビー、一緒にいる?』
マロン「うん。今マスターの店だよ~。」
ジーン『そうだったんだ?』
マロン「ごめんね。心配したよね?」
ジーン『ああ、うん。一緒なら大丈夫そうだね。安心した。』
マロン「大丈夫だから。あとは僕に任せて。」
ジーン『うん。頼む。じゃあ、また明日。』
マロン「うん。またね。」
マロンが席に戻る。
アイビー「おかえり。」
マロン「ジーンくんだったよ。」
アイビー「ジーン?」
マロン「うん。心配してるみたいだった。マスターの店にいるって言ったら安心してたよ。」
アイビー「そっか・・・。」
ジーンが携帯電話を切る。
上を見上げる。
雨はすでに止んでいた。
ジーンが立っていたのはアイビーのマンションの前だった。
しばらくしてから、マンションを背に歩き出す。
深夜。
アイビーがマンションに帰宅した。
部屋の明かりも付けぬまま、窓辺に立つ。
アイビー「 (あのビルの向こうにロミオの家がある・・・。こんなに近いのにビルの陰に隠れて見えない・・・・。) 」
アイビー「 (まるであなたの心みたいよロミオ・・・。) 」
なで肩さんこんにちは^^
返信削除ロミオ(ついに呼び捨てw)まったく言ってる事とやってる事がずいぶん違うんじゃないの~~!!
もうアイビーちゃんの事が気になって気になって嫉妬で狂いそうなんでしょうね~。
何処で誰と何してきてもいいって言ってた時点は、本当にそう思って言ってたのかもしれないけど、ジーンくんが現れ、アイビーちゃんと会うようになって「何だこの気持ち・・・」って気付いちゃったんでしょうかね・・・
でも愛し方が分からないから、荒れるしかないんでしょうね~。
それにしても、目撃しちゃって慌てるマロンちゃんがかわいいですね( ´艸`)
身近にこういう人が居ると、アイビーちゃんも心強いですよねw
そしてマスターが本当に頼もしい( ´艸`)
こういうのは男の気持ちも女の気持ちも分かるオネエは頼りになりますよね~。
>ゆきさん
削除いつもありがとうございます(´∀`)
ロミオ、どんどんいやなやつになっていきますね(;^ω^)
しかし誰にも理解できなかったであろうロミオの心の内を、マスターだけは理解して代弁してくれて、アイビーもちょっとは理解できたかな?
この回をようやくお披露目できてわたしとしてはちょっと満足です。
ゆきさんのコメント、まったくその通りで、いままで気づかずにいた自分の気持ちに気づいてしまって、葛藤しているロミオです。
きっと本人も自分の矛盾に一番気づいているでしょうし、それでもどうしていいのかわからないんでしょうね。
でも簡単には手放すことができずに、ああいう態度しかできない。
不器用な男ですよ。
マロンかわいいですか?( ̄ー ̄)ニヤリ
たしかにシリアスな目撃シーンでマロンみたいなキャラがいてくれるおかげで少しは和んでいるのかもしれませんwww
ここでジーンだけ登場だったらどうなっていたことやらw
マスターはホント頼もしいですね!
困ったときのマスターですよ。
たしかに、もしマロンじゃなくサムとかだったら女の気持ちしかわからないし「ロミオさんなんなのよ!キーッ!o(`ω´*)oプンスカプンスカ!!」ってなっていただろうし、マロンやマスターだからこそ男女関係なく第三者としての冷静な意見が言えたのかもしれませんね。