ディーン「街を出るって・・・なんでだよ。」
ローガン「前々から考えてたことだ。タイミングがちょっと急すぎたけどな。」
ディーン「にしてもラッキーパームって遠すぎだろ!会いに行くのに何時間かかると思ってんだ?」
ローガン「移動だけで半日かかるな。」
ディーン「仕事帰りにお前と飲もうと思ったら着くの朝だぞ?」
ローガン「そうだな・・・。」
ディーン「ったく・・・なんなんだよ・・・。」
ローガン「悪い。でももう決めたんだ。」
ディーン「まぁ・・・お前が決めたなら応援するけどさ。」
ローガン「うん。」
ディーン「独立か・・・。これから大変だな。」
ローガン「ああ。」
ディーン「リアちゃんは?一緒に行くのか?」
ローガン「リアとは別れた。」
ディーン「・・・遠距離になるからか。」
ローガン「ララと寝たんだ。それだけで十分な理由だろ。」
ディーン「え・・・?」
ローガン「あいつが俺に気があるのは前からわかってた。」
ディーン「そうなのか?」
ローガン「ああ。」
ディーン「じゃあララと行くのか?」
ローガン「いや。あいつは関係ない。俺一人で行く。」
ディーン「ララとそういう関係になったんじゃないのかよ。」
ローガン「ララと寝たのは一度だけだ。」
ディーン「お前・・・ララのこと、どういうつもりで抱いたんだよ。」
ローガン「求められれば男なら抱くだろ。」
ディーン「ララの気持ち、もて遊んだのか?」
ローガン「・・・そういうことになるな。」
ディーン「なんなんだよ。意味わかんねぇよ。」
ローガン「・・・・。」
ディーン「お前結局どっちが好きなんだよ。」
ローガン「・・・・。」
ディーン「どっちも遊びかよ!」
ローガン「そうとられてもしょうがないな。」
ディーン「お前さぁ・・・。」
ローガン「俺にとってはどっちも大事だ。大事だった。」
ディーン「だったら・・・。」
ローガン「でも俺じゃどっちも幸せにできない。誰を選んでも俺じゃだめなんだ。」
ディーン「・・・・。」
ローガン「結局いまだに俺は・・・愛ってやつがなんなのかわかんねぇんだ。人を愛せない人間が誰かを幸せにできるわけないだろ。」
ディーン「お前、結局リアちゃんからもララからも逃げてるだけじゃねぇか。」
ローガン「・・・・。」
ディーン「幸せにできないんじゃなくて努力しようとしてないだけだろ。そういうの逃げって言うんだよ。」
ローガン「・・・・そうかもな。」
ディーンが立ち上がる。
ローガン「・・・・。」
ディーン「立てよ。一発殴らせろ。」
ディーン「ララは親友だし俺のいとこだ。お前はそのララを傷つけた。」
ローガン「・・・・。」
ディーン「ララのこと、大事に思ってるならお前が幸せにしてやれよ。」
ローガン「・・・・。」
ディーン「それができないならもう二度とララの目の前に現れるな。」
ゆっくりとローガンが立ち上がる。
ディーン「・・・・。」
ローガン「やれよ。」
ディーン「・・・っ!」
ドカッ!
骨と骨のぶつかりあう鈍い音が響く。
女性「きゃー!」
周りにいた女性客たちが悲鳴をあげ騒ぎ始める。
ディーン「いって~・・・。」
ディーン「人とか殴ったの・・・学生のとき以来だわ・・・。マジいてぇ・・・・。」
ディーンが右腕をさする。
ローガン「 (・・・手加減無しだな・・・。いてぇのはこっちだ。) 」
ディーン「ほら。」
ディーンが手を差し伸べる。
ローガン「・・・・。」
ディーン「口ん中切れたか。絆創膏あるぞ。」
ディーン「ララのことは俺たちに任せろ。」
ローガン「・・・・。」
ディーン「お前はもう忘れろ。ララのことも、リアちゃんのことも。」
ディーン「二人ともいい女だ。ララにはお前なんかよりいい男、俺がみつけてやる。」
ローガン「・・・・。」
ローガン「そんなやつ、いんのかよ。」
ローガンがディーンの手をとる。
ディーン「俺が探してやるよ。」
店内はまだざわついている。
ディーン「あ~、大丈夫ですんで!お騒がせしてすいませ~ん!」
ディーンが声を張り上げると客たちが徐々に引いていく。
女性A「なぁんだ~。知り合いみたい。」
女性B「まったく人騒がせね~。」
手を借りて立ち上がったローガンをディーンが抱きしめる。
ローガン「おい・・・。」
ディーン「ばかやろう。」
ローガン「・・・・。」
ディーン「お前みたいな不器用なやつ見たことねぇよ。」
ディーン「リセットしたいからって、なにもかも捨てて・・・・俺はこれから誰と飲みにいけばいいんだよ。」
ローガン「・・・・。」
ディーン「さみしくなるだろバカ。」
ローガン「お前は俺と違って友人多いから大丈夫だ。」
ディーン「お前じゃなきゃ本音は吐けねぇんだよ。」
ローガン「・・・・。」
ローガン「俺もだ。」
ローガンがディーンの背中にそっと腕を回す。
ディーン「バカ・・・。」
ローガン「会いに来いよ。」
ディーン「・・・来月行くわ。」
ローガン「早ぇな。」
暗い部屋の中。
ベッドサイドの明かりだけが静かにララを照らしている。
ララ「ん・・・・。」
目を覚ましたララがゆっくりと起き上がる。
ララ「 (私・・・いつのまにか眠って・・・・。) 」
ララが時計を見上げる。
ララ「 (6時・・・・ローガン今日も帰ってこなかったのね・・・・。) 」
ララ「 (もう朝ね・・・・。仕事行く準備しないと・・・・。) 」
ゆっくりと窓辺へ向かう。
外はまだ薄暗い。
窓辺に立つと朝の冷たい空気が肌を刺す。
ララ「 (ローガン・・・どこにいるの?もう一度・・・会ってちゃんと話がしたい・・・・。) 」