夜。
ラトーシャのスマートフォンの着信音が鳴る。
ラト「はい。」
ララ『ラト?今なにしてた?』
ラト「食後のコーヒー淹れようとしてるところ。」
ララ「ノンカフェイン?」
ラトーシャ『もちろん。ララは?』
ララ「私は今アンドレアを寝かしつけたところよ。」
ラトーシャ「そっか。この間言ってたデート、どうだったの?」
ララ「よかったわよ。ロデオ・ゴー・ゴーに行ったの。」
ラトーシャ『あそこ美味しいよね。』
ララ「ええ。職場が近いからランチにも来たいって言ってた。」
ラトーシャ「仕事はなにしてる人なの?年齢は?」
ララ「33歳ですって。」
ラトーシャ『2こ上か。ちょうどいいね。』
ララ「中小企業の会社に勤めてるんですって。」
ラトーシャ「そっか。バツイチって言ってたっけ?」
ララ『ええ。』
ララ「前の職場が忙しくってあまり家庭を大事にできなかったらしいわ。」
ラトーシャ「よくあるよね。でも・・・浮気とかじゃなくてよかったじゃん。」
ララ「そうね。」
ラトーシャ『まぁそういうのは言わないかw』
ララ「もう・・・ラトってば。」
ラトーシャ「だってララ全然嬉しそうじゃないんだもん。絶対なにかあったんでしょう?」
ララ『・・・それがね。』
ラトーシャ「うん。(やっぱりw)」
ララ「彼、子供が好きじゃないんですって。」
ラトーシャ「でも子供いたんだよねぇ?前の奥さんとの間には。」
ララ『ええ。』
ララ「ホントは作らない予定だったのにできちゃったから、しょうがなく結婚したみたい。」
ラトーシャ「なるほど・・・。でもやっぱり育児に積極的になれなくて仕事に走ったと。」
ララ『ええ・・・。』
ラトーシャ「正直な人じゃん。ちゃんと言ってくれるなんて。」
ララ「確かにそうだけど・・・。アンドレアのこと抱こうともしなかったのよ?」
ラトーシャ『アンちゃんもデートに連れて行ったの?』
ララ「ええ。彼もちょっと驚いてたけど・・・そんなにだめだったかしら。」
ラトーシャ「う~ん・・・最初のデートに子連れはねぇ・・・。子供好きな人じゃないと喜ばれないと思うよ。」
ララ『まぁそうよね・・・。』
ラトーシャ「ララは恋人じゃなくてアンちゃんの父親が欲しいんだね。」
ララ「・・・考えてなかったけど、そう言われるとそうかもしれないわ。」
ラトーシャ『それじゃあ子供嫌いの彼とは合わないね。』
ララ「そうよね・・・。」
ララ『でもまた会いたいって言われたの。』
ラトーシャ「結婚する気はないけどデートはしたいってこと?」
ララ『多分・・・。アンドレアの父親にはなれないけどって言われたわ。』
ラトーシャ「う~ん、まぁ・・・いいんじゃないかなぁ、友達としてなら。」
ララ「そうよね。ほかはすごくいい人なのよ。話してて楽しいし。」
ラトーシャ『イケメン?』
ララ「わりとイケメンだと思うわ。八重歯がかわいいの。」
ラトーシャ『へぇ~。八重歯いいよね~。』
ラトーシャ「そういえばララ、仕事するって言ってなかったっけ?」
ララ「ええ。年明けに試験があるから受けようと思ってるのよ。年末はなにかと忙しいから、時期的にもちょうどいいの。」
ラトーシャ「そっか。ララなら大丈夫だよ。頭いいし、ブリッジポートの警察署でも優秀だったもんね。」
ララ『そんなことないわよ。』
ラトーシャ「試験がんばってね。」
ララ「ええ、ありがとう。また電話するわね。」
ラトーシャ「うん。次のデートの報告も忘れずにね。」
ララ『わかってるわよw おやすみなさい。』
ラトーシャ「おやすみ。」
ララがスマートフォンの通話をオフにして画面を見つめる。
ララ「・・・・。」
ゆっくりと立ち上がりドレッサーへと向かう。
引き出しの奥から写真立てを取り出し眺める。
ララ「(ショアに戻ってからずっと仕舞っておいたのよね・・・。)」
ララ「(若かったな・・・あの頃はみんなすごく仲が良くて。)」
ララ「(いつかあの頃みたいにみんなで笑える日がくればいいのに・・・・いつか・・・・。)」
ディーン「話し声がしたけど、誰としゃべってたんだ?」
バスルームから出てきたディーンがラトーシャに声をかける。
ラトーシャ「ララだよ。」
ディーン「スピーカーにしてたのか。」
ラトーシャ「うん。」
ディーン「ララ、なんだって?」
ラトーシャ「デートの報告。最近近所に引っ越してきた男の人と。」
ディーン「へぇ~。いいな。」
ラトーシャ「ディーンもコーヒー飲む?」
ディーン「いや、俺はいい。」
ラトーシャ「そっか。」
ディーン「ララといえば・・・あの話聞いてくれた?」
ラトーシャ「ジーンさんの?」
ディーン「うん。」
ラトーシャ「やっぱり嘘ついたみたいよ。ローガンの前だから。」
ディーン「そっか・・・。そうだよな。」
ラトーシャ「うん。アンちゃんのこと、気付いたか心配してはいたけど。」
ディーン「気付かないだろ。まさか自分の子供だなんて。ジーンさんが旦那と思ってるならなおさら。」
ラトーシャ「そうだよね。」
ディーン「ああ。」
ラトーシャ「もう会うこともないから大丈夫って言ってたけど・・・ホントにいいのかな。勘違いさせたままで。」
ディーン「ララがそうしたんだからいいんだろ。」
ラトーシャ「うん・・・。」
ディーン「デートの相手もいるようだし、近いうちにホントの家族ができるだろあいつには。」
ラトーシャ「・・・・。」
ディーンのスマートフォンの着信音が鳴る。
ディーン「あれ?俺にもか・・・。」
ディーン「もしもし。」
アイビー『ディーン、今ひとり?』
ディーン「いや・・・。」
アイビー『・・・ちょっと話せる?』
ディーン「わかった。ちょっと待って。」
ディーンがスマートフォンを持ったまま二階へと上がっていく。
ディーン「もしもし。」
アイビー『ごめんね。気を遣わせちゃって・・・。』
ディーン「気にするな。それよりどうした?」
アイビー「うん・・・。ローガンのことなんだけど・・・。」
ディーン「ローガンがどうしたんだ?(アイビーからローガンの話なんて珍しいな。)」
アイビー「ララがジーンと結婚したとかって・・・。」
ディーン「ああ、その話か。」
アイビー『うん・・・。』
ディーン「あれはララが咄嗟についた嘘だ。」
アイビー「そっか・・・そうじゃないかと思った。」
ディーン『ローガン他になにか言ってたのか?』
アイビー「ううん。でも・・・すごく傷ついてるみたい。」
ディーン「ローガンが?」
アイビー『うん。』
アイビー「最近毎晩のようにお酒飲んで深夜に帰ってくるし・・・仕事も忙しいのに心配で。」
ディーン『そっか。』
アイビー「ローガンと暮らしてからこんな風に荒れてるのはじめてだから・・・。」
ディーン「あいつストレスあるといつも女のところ行ってたけどな。学生の頃は。」
アイビー「・・・女の人にも会ってるみたい。」
ディーン『そっか。』
ディーン「ララのほうは最近男とデートしたりしてるみたいだし、ジーンさんとはなにもないみたいだぞ。ただの友達だって。」
アイビー「そっか。」
ディーン「お前こそいいのかよ。ジーンさん、ずっとお前のこと探してるみたいだぞ。」
アイビー『わかってる。』
ディーン「わかってるって・・・。」
アイビー「私のことはいいの。ジーンにも、もう忘れてほしいから。」
ディーン『・・・・。』
アイビー「それより今はローガンとララのことだよ。」
ディーン「ララのことはさておき、ローガンか。まぁ時間が解決するだろ。そのうち元に戻るよ。お前が気にすることじゃない。」
アイビー『でも・・・。』
アイビー「勘違いしたままでいいのかな・・・。ローガン、本当の娘に会ってるのに・・・。」
ディーン「お前、ローガンに本当のことを話すつもりじゃないだろうな?」
アイビー『違うよ。』
アイビー「でも、あんなローガン見てられないよ。すごく寂しそうな目をしてた。」
ディーン「・・・なにしようとしてるかわかんねぇけど、絶対におせっかいはやめとけよ。お前は関係ないんだからな。」
アイビー「・・・・。」
ディーン『アイビー、兄として言うぞ。』
ディーン「ローガンのこと心配なのはわかるけど、お前は首突っ込むな。これはララとローガンの二人の問題なんだ。わかったな。」
アイビー「わかってるよ。そんなこと・・・。」
ディーン『あと、変な気起こすんじゃないぞ?ローガンとだけはヤルなよ?』
アイビー「・・・・。」
ディーン「あ、切られた・・・・。」
ディーン「(あいつ・・・。)」
アイビー「・・・・。」
アイビー「(どうしたらいいんだろう・・・。私になにができるのかな・・・。)」