ローガン「今日はこのくらいにしておきましょうか。」
議員「そうだねぇ。」
ローガン「飯にしますか。」
議員「・・・?」
ローガン「いつもの店でいいですか?」
議員「なにか予定があるとか言ってたじゃろう?」
ローガン「・・・?」
議員「先週そう言って予定を午前中に変更してきたのは君のほうじゃったぞ?」
ローガン「・・・そうでした。」
議員「飯はまた来週じゃな。ちょっと遠いがうまい中華の店があるんじゃよ。」
ローガン「中華ですか?いいですね。」
議員「来週はそこを予約しておこう。」
ローガン「楽しみにしておきますよ。」
議員「じゃあまた。」
ローガン「お気をつけて。」
ローガン「(すっかり忘れてたな、写真屋か・・・。確か1時だった。アイビーたちもいないし・・・キャンセルするか。)」
ローガン「(いや・・・行けるか。今から車飛ばせばギリギリ・・・・。)」
ローガンが事務所のドアを開けてリビングへやってくるとちょうどララが階段を下りてきた。
ララ「ローガン、おなかすいた?そろそろご飯にするわね。」
ローガン「いや、飯はいい。」
ローガン「すぐにでかけるから、コート着ろ。アンドレアも。」
ララ「でかけるってどこに?食事の準備ならできてるのに・・・。」
ローガン「悪いが夕飯に回してくれ。訳は車で話す。あまり時間がない。」
ララ「そうなの?」
ララ「わかったわ・・・。とりあえず、コート着てくるわね?」
ローガン「すまん。玄関に車つけとく。」
ララ「ええ。」
ブリッジポート。
街は真っ白な雪に覆われている。
アイビーがミランダの墓石にそっと花束を手向ける。
手を合わせるアイビーの傍でアダムが大人しく墓石を見つめている。
アイビー「おいでアダム。」
アイビー「あなたのママとパパのお墓だよ。」
アダム「ママ?」
アイビー「そう。二人ともここで仲良く眠ってるんだよ。」
リリィ「隠さない気なのね。」
アイビー「え?」
リリィ「本当の両親がいるってこと。」
アイビー「隠してもいつかバレますしw それに小さい頃からちゃんと話しておいたほうがいいと思って。」
リリィ「確かにそのほうが賢いかもね。」
アイビー「はい。」
リリィ「このあと時間あるわよね?」
アイビー「はい。」
リリィ「アーロンの店に行きましょ。呼ばれてるのよ。あなたも連れてこいって。」
アイビー「マスターの?」
リリィ「ええ。」
アイビー「わぁ・・・マスターに会うの、何年振りかな。マスター元気ですか?」
リリィ「もちろんよ。」
アイビー「でも、お店はまだ閉店時間じゃ・・・。」
リリィ「私たちの為に貸切にすると言っていたわ。」
カメラマン「可愛いね~。モデルさんみたいだよ。」
アンドレア「えへへ。」
カメラマン「いいね~。くまさんぎゅってしてみようか。」
アンドレア「こう?」
カメラマン「そう!お嬢ちゃん将来モデルさんになれるよ~。」
アンドレア「うふふ~」
ララ「ありがとうローガン。とっても素敵な衣装。アンドレアもすごく喜んでるみたい。」
ローガン「ああ。」
ララ「でも・・・よかったの?これってアイビーたちの為に予約していたのよね?」
ローガン「そうだが居ないんだからしょうがない。あいつもすっかり忘れてたんだろう。」
ララ「そうかもしれないけど・・・なんだか悪いわ。」
ローガン「気にするな。また予約すればいい。」
ララ「じゃあ・・・お言葉に甘えて。」
ローガン「ああ。1週間程度で出来るだろうから、そしたら送るよ。あとで住所教えてくれ。」
ララ「ええ。」
カメラマンが立ち上がり二人のほうを振り向く。
カメラマン「じゃあ次はご家族で。」
ララがアンドレアを抱き上げる。
アンドレア「ママもモデルさんやる~?」
ララ「ええ。次は一緒に撮るのよ。」
カメラマン「ほらっ。旦那さんも、お早く。」
ローガン「ああ、いや・・・・結構です。俺は家族じゃないんで。」
カメラマン「そうだったですね。じゃあ彼氏さんですか?」
ローガン「いや・・・そういうのじゃ。」
カメラマン「でもせっかくだし一緒にどうぞ!何人入っても金額は変わりませんから!」
ローガン「いや・・・。」
ララ「ローガン、せっかくだから一緒に。記念になるし・・・あなたが嫌じゃなければだけど。」
ローガン「・・・・。」
カメラマン「奥様もああ言っていますし!」
ローガン「・・・じゃあ。」
カメラマン「ソファーの横にお願いします。」
ローガンがソファーの横に立つ。
カメラマン「いいですね!あ~・・・彼氏さん、もうちょっと寄って、奥様の肩に手を置いてみましょうか。」
ローガン「・・・・こうか。」
ローガンがララの肩に軽く手を添える。
カメラマン「そうそう!とてもいいですよ~。」
カメラマン「はい。じゃあいきますね~。何枚か撮りますよ~。」
カメラマン「は~い、笑って~。」
スタジオの中にカメラのシャッター音が響く。
マスター「寒かったでしょう?」
アイビー「はい。でも風はそんなに強くないので大丈夫です。」
マスター「そう。明日は何年振りのホワイトクリスマスかしらね。」
マスター「それにしても・・・大きくなったわね。」
アイビー「明日で3歳になります。」
マスター「命日が誕生日だものね。」
アイビー「はい。」
リリィ「今住んでいるのはラッキーパームスだったわよね?」
アイビー「はい。」
リリィ「友人と住んでるって言ってたわね。」
アイビー「はい、学生時代からの。とてもよくしてもらっています。」
リリィ「恋人ではないの?」
アイビー「いいえ。」
アイビー「彼は兄の親友でもあるし、お互いにそういう感じではないですね。兄妹の感覚に近いと思います。」
リリィ「まぁ・・・男女の関係なんていつどうなるかわからないけどね。」
アイビー「そう・・・ですかねw」
リリィ「今は恋人はいないのね。」
アイビー「はい。」
アイビー「社長、アンナさんは元気ですか?」
リリィ「元気よ。今夜のパーティーの為に朝から準備で忙しいみたい。」
アイビー「そっか。今夜は事務所のクリスマスパーティーでしたね。」
マスター「うちの店も今夜は予約でいっぱいだわ。」
アイビー「すみません。忙しい時期に。」
マスター「いいのよ。呼んだのはこっちなんだから。それにまだ開店前だし。」
リリィ「あなたこの後の予定は?」
アイビー「えっと・・・今日の部屋探しですかね?w」
リリィ「部屋探し?」
アイビー「実は・・・ロミオの家の鍵を忘れてしまってw」
リリィ「昨夜着いたのよね?どこに泊まってたの?」
アイビー「モーテルに。でも今日はそこも予約でいっぱいらしくて。」
リリィ「クリスマスイブですものね。」
マスター「確かこの街に兄弟がいるって言ってたわよね?」
アイビー「はい。この近くに住んでます。」
アイビー「でも義姉が今妊娠中で・・・あまり負担をかけたくはないので。」
マスター「来ることも知らせていないの?」
アイビー「はい。」
リリィ「うちにって言いたいところなんだけど・・・今夜は帰れそうにないのよ。悪いわね。」
アイビー「とんでもないです。社長も今夜はパーティーで忙しいのに、お墓参りまで付き合ってくださってありがとうございました。」
リリィ「私も墓参りに来る予定だったもの。」
アイビー「部屋はたぶんなんとかなります。最悪カラオケとかでもいいし。」
リリィ「あなたはよくてもアダムが寝られるかしら?」
アイビー「そうなんですよねぇ~・・・。」
マスター「うちに泊まったら?」
アイビー「え?」
マスター「部屋なら空いているわよ。忙しくて私は相手してあげられないけど。」
アイビー「でも・・・ご迷惑じゃ。」
マスター「平気よ。ロミオやミランダもよく泊ってた部屋よ。酔いつぶれた日にね。」
リリィ「私は泊ったことないわね。」
マスター「あなたは酔いつぶれたりなんてしないでしょう?」
マスター「今夜はお店が騒がしいかもしれないけど、上の部屋には音は響かないからアダムも落ち着いて眠れるはずよ。」
アイビー「本当に・・・いいんですか?」
マスター「もちろん。言っておくけど、誰でも泊めるわけじゃないわよ。」
アイビー「じゃあ・・・よろしくお願いします。とても助かります。」
マスター「荷物は?」
アイビー「駅のロッカーに。」
マスター「じゃあ取りにいかなくちゃね。」
マスター「荷物を取ってきたら開店前には戻ってきてね。」
アイビー「はい。下着くらいしか持ってこなかったので、少し買い物してから戻ります。」
マスター「わかったわ。」
ララ「さっきのランチのお店、すごくおいしかったわね。」
ローガン「ああ。この街で一番気に入ってる店だ。」
ララ「そうなの?アイビーたちともよく来るの?」
ローガン「いや、アイビーは連れてきたことないな。」
ララ「そう。」
ララ「・・・?家の方角とは逆じゃない?」
ローガン「ああ。仕事の予定までもう少し時間あるから、ちょっとだけ付き合ってくれ。」
ララ「もちろん。どこへ行くの?」
ローガン「もうすぐ着く。」
着いたのは街の中の公園だった。
さっきまでかかっていた霧が晴れ、温かい日差しがさしている。
アンドレア「ハチさん!」
ローガン「アンドレアはハチさんが好きか?」
アンドレア「ハチさん好きー!うさぎさんはもっと好き!」
ローガン「残念ながらこの乗り物にうさぎさんはいないなw」
アンドレア「ざんねん~。」
ローガン「ははw」
アンドレアの楽しそうな笑い声が公園に響きわたる。
ララ「(ローガンのあんな表情、はじめてみたわ。あんな顔もするのね・・・。アンドレアもすごく楽しそう。)」
ララ「(まるで親子みたい・・・。本当は・・・血のつながった親子なんだけど・・・。)」
ララ「(どうしよう・・・泣きそうだわ。・・・ダメよララ。この街を出るまでは平常心でいなくちゃ・・・。)」
アンドレア「終わっちゃった~。」
ローガン「終わっちゃったな。」
アンドレア「次あれに乗る!」
アンドレアが滑り台に向かって駆け出す。
ローガン「気をつけろよ。」
アンドレア「きゃっ!」
勢いよく転び芝生に顔を打ち付ける。
アンドレア「・・・ふぇ~ん。」
ローガン「大丈夫か?」
ローガンがアンドレアに駆け寄る。
アンドレア「痛ぁい~。」
ローガン「見せてみろ。ケガはないか?」
アンドレア「ママぁ~~。」
ローガン「・・・大丈夫だ。顔にキズはない。」
アンドレア「痛いのぉ~~~。」
ララ「アンドレア泣かないの。」
アンドラ「ママぁ~~~~。」
ララ「いらっしゃい。」
アンドレア「痛いの~~。」
ララ「痛いの痛いの飛んでけ~。ほ~ら、もう痛くなんてないわよ。」
アンドレア「ふぇ~・・・。」
ララ「ね?どこも痛くないでしょう?キズもできてないわ。よかったわね。」
アンドレア「本当にぃ?」
ララ「ええ。かわいい顔のまんまよ。」
ローガン「流石母親だな。」
ララ「心配させちゃってごめんなさいね。この子すぐ泣くのよ。」
ローガン「いや、普通泣くよな。」
ララ「え?」
ローガン「アダムが全然泣かないからそれに慣れちゃって、泣かれるとオロオロしてしまう。」
ララ「そうなの。」
ローガン「ああ。でもどんなに懐いてもやっぱり泣いたときは母親が一番だよな。抱くだけで安心するんだろう。」
ララ「あなたも子供の相手がすごくうまいのね。最初は警戒してたのに、今ではアンドレアもすごく懐いてる。」
ローガン「そうか?」
ララ「ええ。」
ローガン「すまん。そろそろ時間だから帰らないと。」
ララ「そうよね。ありがとう、アンドレアを遊ばせてくれて。すごく喜んでたわ。」
ローガン「ああ。行こうか。」
ララ「ええ。」
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