3ヶ月が過ぎた。
医師「体調も安定してきたので、近いうちに退院できそうです。」
リリィ「本当ですか?」
医師「はい。」
医師「ただ、以前にも話したように、成長過程で足の骨に問題があることがわかりました。」
リリィ「はい。」
医師「いまのところはまだなんとも言えませんが、今後足に障害が出る可能性もあります。」
リリィ「はい。」
アイビー「・・・・。」
医師「今後も定期的に通院して様子をみましょう。」
リリィ「わかりました。」
アイビー「先生、退院はいつですか?」
医師「来週、週明けにしましょうか。」
アイビー「はい。」
医師「大丈夫ですよ。あの子は生命力が強い。今までよくがんばりましたよ。」
アイビー「そうですね。私もそう思います。」
リリィ「ええ。」
1週間後。
リリィ「先生、本当にありがとうございました。」
医師「がんばったのはアダムくんですよ。」
看護士「本当に。たくさん褒めてあげてください。」
リリィ「ええ、もちろん。でもあのとき、アダムの命を救ってくださったのは先生ですから。感謝しています。」
医師「患者の命を救うのが医師の使命です。それに、アダムくんの生きようとする力はとても強いと思いますよ。」
アイビー「700gしかなかった子が、今ではこんなに大きくなりましたものね。」
リリィ「ホントにね。」
アダム「ばぶぅ。」
アイビーがアダムをそっと抱きしめる。
それを見つめるリリィ。
リリィ「それでは先生、お世話になりました。」
アイビー「来週また伺います。」
医師「はい。お気をつけて。」
看護士「またね、アダムくん。」
二人が立ち去る。
その後ろ姿を見つめる医師。
看護士「元気に育ちますように。」
医師「・・・。」
数日後。
4月に入ったブリッジポートには、色とりどりの花々が咲き乱れている。
ディーン「おはよ~ラト。」
ラトーシャ「ディーンおはよう。そろそろ起こしに行こうかと思ってたところ。二度寝したでしょ?」
ディーン「ちょっとだけね。」
ラトーシャ「ゆうべ遅かったもんね。」
ディーン「いい匂いだな。今日はパンケーキ?」
ラトーシャ「そう。いっぱい焼いたんだ。アイビーのところに持っていこうと思って。」
ディーン「いただきま~す。」
ラトーシャ「召し上がれ。」
ディーン「今日だっけ?行くの。」
ラトーシャ「うん。今日は一日休みだって。」
ディーン「そっかぁ。・・・あいつホントに大丈夫かな~。」
ラトーシャ「ね。心配だよね。」
ディーン「うん・・・。」
ラトーシャ「シッターさんも来てくれてるらしいんだけどね。」
ディーン「そうだよな。じゃないとムリだよな、一人だなんて。」
ラトーシャ「アイビーのことだから、子供の世話で自分の食事とかちゃんとできてないと思うんだよね。」
ディーン「あ~。」
ラトーシャ「だから、時々作りに行ったりしようかと思って。私まだ仕事も見つかってないし。」
ディーン「ごめんなラト。色々気ぃ遣わせちゃって。」
ラトーシャ「なに言ってんの。当たり前でしょ。」
ディーン「そう言ってくれると助かる。」
ラトーシャ「私、暇だしね。赤ちゃん見たいしw」
ディーン「俺も会いに行かないとな~。」
ラトーシャ「ディーンが休みのときに二人で会いに行こうね。」
ディーン「そうだな。」
数時間後。
ラトーシャ「抱いてもいい?」
アイビー「うん。もちろんだよ。」
ラトーシャがゆっくりとアダムを抱き上げる。
ラトーシャ「かわいい~。おめめパッチリだね。」
アイビー「そうなの。」
ラトーシャ「ロミオさんに似てる気がする。私、数回しか会ったことなかったけど。」
アイビー「やっぱりそう思う?目元がそっくりでしょ。」
ラトーシャ「うん。」
アイビー「ディーンは?元気にしてる?」
ラトーシャ「うん。今日は夜勤だから、まだ家でのんびりしてる。」
アイビー「そっか。」
アダム「ふわぁー・・・。」
ラトーシャ「あらあら、どーちたんでちゅか~。眠いのかな?」
ラトーシャがアダムをゆっくりとさする。
アイビー「やっぱりラトは上手だね。子供あやすの。」
ラトーシャ「歳の離れた弟がいたからね~。あ、もうウトウトしはじめたかも。」
アイビー「私お茶入れてくるね。」
ラトーシャ「あ、ケーキ買ってきたんだ。食べよう。」
アイビー「うん。わざわざありがとう。」
アイビー「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」
ラトーシャ「紅茶がいいかな。チョコレートケーキなんだ。」
アイビー「了解。」
ラトーシャ「パンケーキいっぱい焼いてきたの。あとで食べてね。」
アイビー「うん。ありがと~。」
ふとアイビーの指先に目がいく。
ラトーシャ「・・・。」
ラトーシャ「(いつもネイルしてたのに・・・。靴もいつものヒールじゃなくてぺたんこだ・・・。アイビー、赤ちゃんのことやっぱり本気で育てるつもりなんだ・・・。)」
アイビー「おいしいっ!」
ラトーシャ「でしょ?」
ラトーシャ「近所に最近できたケーキ屋さんなの。評判いいんだよ。」
アイビー「へぇ~。いいね、そういうとこ。」
アイビー「このへんそういうお店全然なくてさ。スーパーも遠いんだよね。」
ラトーシャ「そういえばそうだね。」
アイビー「買い出し行くのも子供いると大変だし・・・ネットスーパーっていうの、利用しようかとも思うんだけど。」
ラトーシャ「でも芸能人ってバレたら大変じゃない?」
アイビー「そうなの。さすがに子供用品とか運んでもらうのは、ちょっとなぁって思って。」
ラトーシャ「そうだよね・・・。」
アイビー「でもリリィ社長が、いいベビーシッターさん紹介してくれてね。」
ラトーシャ「そういえばシッターさん来るって言ってたね。」
アイビー「うん。」
アイビー「私が入る前にうちの事務所でモデルやってた人なんだけどね。保育士の資格持ってるんだって。40代の人なんだけど、お子さんがもう高校生くらいで、ちょうど暇してたらしいの。」
ラトーシャ「へぇ~。」
アイビー「先週から来てもらってるんだけど、すごく助かってるんだ。時々買い出しもしてきてくれるの。」
ラトーシャ「へぇ~。それは助かるね。」
アイビー「うん。」
アイビー「やっぱり一人じゃ全部はできなくて・・・。」
ラトーシャ「当たり前だよ。」
ラトーシャ「シングルマザーだって大変なのに、ましてやアイビーは名の知れた芸能人だし・・・。」
アイビー「うん・・・。」
ラトーシャ「私もできることあったら協力するから。なんでも言ってね。」
アイビー「でもラト、そろそろ仕事探すって言ってなかった?」
ラトーシャ「今探してるところ。でも、バイト程度でできるところにするつもり。」
アイビー「そうなんだ?」
ラトーシャ「アイビー。」
アイビー「うん?」
ラトーシャ「ご両親には・・・?」
アイビー「話さない・・・わけにはいかないよね。きっとすごく反対されると思うけど。」
ラトーシャ「まだなにも話してないんだ?」
アイビー「うん・・・。」
アイビー「ディーンにも、どうするんだ?って、ずっと言われてるけど・・・。いつかは話さなきゃね・・・。」
ラトーシャ「そうだよね・・・。」
アイビー「でもまだ・・・もう少しアダムが大きくなってからって思ってて。」
ラトーシャ「もし一人で言うのがムリだったら、私もディーンも一緒に行くから。いつでも言ってね?」
アイビー「うん。ありがとう。」
ラトーシャ「私、アイビーの義姉なんだからね。」
アイビー「そうだったw」
アイビー「そういえばラト、この前地元帰ったんだよね?ララには会った?」
ラトーシャ「会ったよ~。ララがね~・・・。」
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