年が明けた。
静かなスターライトショアの街を冷たい風が吹く。
ネイビー ブラウン家。
ララが階段をおりてくる。
ララ「ママ~。」
マリア「なぁに?ララ。」
ララ「もうすぐラトが遊びに来るんだけど、昨日買ってきたケーキ、まだあったわよね?」
マリア「ええ、まだ半分くらいは残ってるけど・・・。」
マリア「ララ、ラトーシャちゃんが来るなら、あなたたち二人ででかけてきたらどう?」
ララ「え?いいの?」
マリア「ええ。もちろんよ。」
ララ「でもパパもでかけちゃったし、アンドレアが・・・。」
マリア「アンドレアなら、ママがちゃんとめんどうみてるから大丈夫よ。たまには女同士でゆっくりしてらっしゃい。」
ララ「じゃあ・・・そうさせてもらおうかしら?」
マリア「ええ。」
ララ「ありがとうママ。」
マリア「あなたも毎日アンドレアにつきっきりだものね。たまには羽根を伸ばしなさい。」
ララ「うん。」
玄関のチャイムが鳴り響く。
ララ「あ、ラトかしら。」
ララ「は~い。」
ララが玄関のドアを開ける。
抱き合う二人。
ララ「いらっしゃい!ラト。」
ラトーシャ「ララ!元気してた~?」
ララ「元気よ~!ラトも元気そうね!」
ラトーシャ「髪切ったの??すっごく素敵!」
ララ「本当?ありがとう。」
ラトーシャ「雰囲気変わったね!」
ララ「ふふっ。育児に長い髪が邪魔だったの。」
ララ「ディーンは元気?」
ラトーシャ「うん。今日は兄弟ででかけてくるって。」
ララ「そうなの。」
マリア「ラトーシャちゃん、いらっしゃい。明けましておめでとう。」
ラトーシャ「明けましておめでとうございます。すみません急に押しかけちゃって。」
マリア「いいのよ。」
ララ「ママがね、二人ででかけてきなさいって。」
ラトーシャ「え?いいんですか?」
マリア「ええ。ララもアンドレアと家にこもってばかりだから、ラトーシャちゃん連れ出してくれる?」
ラトーシャ「もちろんです。」
ララ「じゃあ私、コートとってくるわね。ちょっと待ってて。」
ラトーシャ「うん。」
ララが階段をあがる。
ラトーシャ「アンちゃん顔つき変わりましたね~。」
マリア「産まれたばかりのころはお猿さんみたいだったものね。ラトーシャちゃん抱いてみる?」
ラトーシャ「いいんですか?」
マリア「ええ。」
ラトーシャ「あ、ちょっと重たくなった。」
マリア「まだ2ヶ月だけど、子供の成長ってホント早いものよね。」
ラトーシャ「ホントですね~。」
アンドレア「きゃっきゃ。」
ラトーシャ「あ、笑った!」
マリア「ふふっ。アンドレアはラトーシャちゃんのことが好きみたいね。」
ラトーシャ「そうですか?」
マリア「この子人見知りだから、知らない人に抱かれるとよく泣くのよ?」
ラトーシャ「かわいいなぁ~。」
ラトーシャが優しくアンドレアを抱きしめる。
マリア「あなたたちは子供はまだ?」
ラトーシャ「はい。欲しいとは思ってるんですけど・・・なかなか・・・。」
マリア「まだまだ若いんだから大丈夫よ。」
ラトーシャ「そうだといいんですけど・・・。」
マリア「子供ってホントいいものよ。私も最初は反対してたけど、いざ産まれてみたら本当にかわいくって。目に入れても痛くないわ。」
ラトーシャ「アンちゃんはすごくかわいいですもんね。わかります。」
ララ「おまたせ~。」
ララが階段をおりてくる。
ララ「じゃあママ、アンドレアのことお願いね。」
マリア「ええ。外は雪だから、足元気をつけるのよ。」
ララ「はぁい。じゃあねアンドレア。いってきます。」
マリア「いってらっしゃい。」
ララ「は~い。」
ラトーシャ「おじゃましました。」
マリア「気をつけてね。」
二人が玄関を出る。
ララ「どこに行きましょうか?」
ラトーシャ「ララどこか行きたい場所ある?」
ララ「そうね~。・・・そうだわ、ビーチに穴場のカフェがあるの。そこにしましょ。」
ラトーシャ「へぇ~。いいね。」
ラトーシャ「いい店だね。こんな場所あったっけ?」
ララ「昔からあった海の家を改装して、去年オープンしたの。夏は結構混んでるけど、冬場は人も少なくて穴場なのよ。」
ラトーシャ「ショアの海は、冬はサーファーも少ないもんね。」
ララ「そう。この店のパイ、すっごくおいしいのよ。」
ララ「時々ママと、アンドレアの散歩ついでにここに来てたの。」
ラトーシャ「そうなんだ?ここならララの家からも近いもんね。」
ララ「ええ。」
ララ「最近どう?」
ラトーシャ「相変わらず。年明けたらまた仕事はじめようかなって思ってるの。」
ララ「そうなの?いいわね。」
ラトーシャ「ララは?」
ララ「私は毎日アンドレアの子育てよ。ママが居てくれるから助かってるの。」
ラトーシャ「そうなんだ?」
ララ「ママ、私の為に議員も辞めてしまったから・・・。」
ラトーシャ「ママから聞いた。ララのお母さん人気あったし、次の区長選、候補だったんだよね?」
ララ「ええ。あんなにがんばってたのに・・・申し訳ないことしちゃったわ・・・。」
ラトーシャ「決めたのはララのママだもん。娘や孫のほうが、誰だって大事だよ。」
ララ「そうかしら・・・。」
ラトーシャ「そうに決まってる。それに、さっき話したときもすごく幸せそうだったよ。」
ララ「それならよかった・・・。」
ララ「そういえば、年末にアイビーから電話がきたのよ。」
ラトーシャ「そうなんだ?」
ララ「来られなくなったって。残念だったわね。」
ラトーシャ「そうだね。」
ララ「アイビーも、色々大変だったみたいね・・・。」
ラトーシャ「聞いたんだ?子供のこと・・・。」
ララ「ええ。びっくりしちゃった。あのミランダ・レッドの隠し子だなんて・・・。」
ラトーシャ「そうだね。」
ララ「まぁ、ミランダが一時期BiBiのモデルをやっていたのは、高校のころから愛読してたし、知ってたけど。」
ラトーシャ「なんか・・・色々複雑だよね・・・。子供のこと、悩んでる時期に事故死だなんて・・・。ロミオさんも・・・報われないよね。」
ララ「そうね・・・・。」
ラトーシャ「でも、アイビーも・・・他人の子を育てるだなんて・・・すごい決断だよね。」
ララ「他人には、思えないのかもしれないわね。愛する人の子供なわけだし。」
ラトーシャ「・・・・そうだね。」
ララ「それにもういない、大好きだった男性の、形見だものね。」
ラトーシャ「・・・・。」
ララ「ロミオさんも、孤児院育ちだったんでしょう?」
ラトーシャ「うん。そう聞いた。」
ララ「同じような思いをさせたくなかったんじゃないかしら。ちゃんと子供に、親の愛というものを知って欲しかったのかもしれないわね。」
ラトーシャ「愛、かぁ・・・・。」
ララ「私だって時々、泣きたくなるときもある。なぜアンドレアが泣いているのかわからなくて、どうしても泣き止んでくれないときとか・・・。」
ラトーシャ「・・・・。」
ララ「子育てってすごく難しいの。でもそれ以上の喜びもたくさんあるのよ。」
ラトーシャ「・・・・。」
ララ「今は産んでよかったと思ってる。すごく悩んだけど・・・、あのときの自分の選択は間違ってなかったって思うのよ。」
ラトーシャ「ララ・・・・まだ連絡してないの?ローガンに。」
ララ「してないわ。番号も、消してしまったから。」
ラトーシャ「いいの?私、知ってるしいつでも・・・。」
ララ「いいのよ。」
ララ「アンドレアのことは、言うつもりないし。もしこの街で偶然会ったとしても、違う男性の子供だと言うつもりなの。」
ラトーシャ「ララ・・・・。」
ララ「私もね、いつまでもママやパパに頼るわけにはいかないから・・・・アンドレアを保育園に預けられるようになったら、また働くつもりなのよ。」
ラトーシャ「ショアで?」
ララ「ブリッジポートの職場の上司は、いつでも戻ってこいって言ってくれたけど・・・やっぱり両親が住むこの街で暮らしたほうが、アンドレアにとっても、私にとってもいいと思ってるの。だからここで再就職するつもり。」
ララ「そしたら・・・素敵な男性に出会えるかもしれないし。また恋をして、・・・いつか子持ちの私でも、結婚する日が来るかもしれないわよね。今はまだ、考えられないけど。」
ラトーシャ「ララなら大丈夫だよ。私が保証する。高校のときだって一番モテてたもん。」
ララ「アイビーは当時からモデルやってたから、高嶺の花すぎたのよねw」
ラトーシャ「そうだねw」
ララ「私、料理だってできるようになったのよ?」
ラトーシャ「じゃあもう完璧だね。」
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