翌日。
映画館ではキャラクター物のコメディー映画が上映されている。
館内に時折人々の笑い声が響く。
アンドレア「ママ。」
ララ「なぁに?アンドレア。」
アンドレア「アダムちゃん寝ちゃったわ。」
ララ「寝かせといてあげなさい。」
アンドレア「でもまだはじまってちょっとしかたってないよ?真っ暗になってすぐ寝ちゃったのよ?」
ララ「疲れてるんでしょう。そのうち起きるわよ。」
アンドレア「え~、せっかく面白いのにぃ。」
ララ「アンドレアも、アダムばかり見てないでモニターみないと面白いシーン見逃しちゃうわよ。」
アンドレア「大変っ!」
ララ「ふふっw」
数時間後。
子供たちを係員に預けて、アイビーとララがジェットコースターを楽しんでいる。
ララ「ジェットコースター乗るのはじめてよ!」
アイビー「そうなの?私大好きだよ!」
ララ「きゃーっ!」
アイビー「楽しい!」
ララ「ええ、すっごくスリリングね!」
ララ「はぁ~楽しかった!」
アイビー「ララはこういうの苦手かと思ってたw」
ララ「思ったより全然平気だったわw ちょっとおなかすいてきたわね。」
アイビー「そろそろお昼ご飯にしよっか。」
ララ「ええ。そうしましょう。」
ランチを済ませたアイビーたちは、幼児向けの遊具で子供たちを遊ばせている。
アイビー「たのしい?」
アダム「あいっ!」
アイビー「ふふっw」
ララ「アンドレアはラッキーパームスが気に入ったみたいね!」
アンドレア「うんっ!ずっとここに住む~。」
ララ「ママそれは困るわ~w」
アイビー「アダムもアンちゃんが一緒だと楽しいねw」
アダム「あいっ!」
すっかり仲良くなったアダムとアンドレアが一緒に遊具で遊んでいる。
アイビーとララはベンチに座って二人を見守っていた。
ララ「うちはママもパパもいてくれるし、テレビもしょっちゅうつけてるからかしらね。アンドレアは言葉を覚えるのが早かったわ。」
アイビー「テレビかぁ~。私はあんまり付けないなぁ・・・。それに家事やってる間はアダムはずっと一人で遊んでるし・・・、あの子は一人で遊ぶのが楽しいみたいだからあまり泣いたり駄々こねたりもしないし助かるんだけど。」
ララ「子供の性格も環境によって全然違うわよね。アンドレアは一人にしたらすぐ泣くもの。」
アイビー「そうなんだ~。」
アイビー「子育てって大変だよね。」
ララ「ええ、とっても。今日は同じ年のアダムと一緒だから、アンドレアもすごく楽しそうだわ。」
アイビー「アダムもそうだよ。ずっと笑ってる。」
日が落ちて気温が下がったラッキーパームスは昼間の温かさが嘘のようだ。
遊園地を出たアイビーたちは街の中心部にあるダイナーで食事をしている。
ララ「少し辛いけどおいしいわね、このカレー。」
アイビー「うんw 私もここのカレー大好きなんだ。」
アイビー「この味がなかなか出せないんだよね。意外とカレーって難しくない?」
ララ「アイビーはスパイスとか入れてるの?私はいつも市販のカレー粉しか使ってないわw ママがそうだったから。」
アイビー「そうなんだ?カレーも家庭の味が出るよねぇ。」
ララ「確かにそうねw」
アイビー「ララって料理教室に通ってたよね?」
ララ「ええ。今でも時々。」
アイビー「なんかルームシェアしてた頃とは随分変わったよね。」
ララ「そうね。昔の私はキッチンに立つこともしなかったものねw」
アイビー「えらいねララは。昔から勉強熱心だし。」
ララ「やらざるを得ない状況になっただけよ。それに昔は嫌いなことは全部避けてたもの。」
アイビー「そうなの?」
ララ「ええ。今は嫌いだからって避けて通れない状況になっただけよ。」
アイビー「私はどちらかというと家事楽しいかな。なにも考えずに黙々と仕事するほうが、性格的に合ってるみたいw」
ララ「モデルの仕事は合ってなかった?」
アイビー「ううんw あれもあんまりなにも考えずにできてた気がするw TVのほうがしゃべること考えなきゃいけなくて苦手だったなw」
ララ「確かに、TVの時のアイビーとモデルの時とではギャップがありすぎたわよねw」
アイビー「そうかもw」
ララ「ねぇアイビー、彼はここには呼ばないの?」
アイビー「あ~・・・。」
ララ「今夜くらいに会わせてくれるのかと思ってたけど。」
アイビー「そのことなんだけど・・・。」
ララ「・・・・?」
アイビー「ちょっと話が長くなるし、ララにとってはショッキングなことだと思う。」
ララ「ショッキング?」
アイビー「うん。」
アイビー「あのねララ、勘違いさせたくないから先に言っておくね。私が今一緒に住んでる人っていうのは恋人とかではないんだよ。」
ララ「そうなの?どういう関係の相手なの?」
アイビー「サポート・・・っていうほうが正しいと思う。お互いに。」
ララ「・・・サポート?」
アイビー「うん。一緒に住んでるのはローガンなの。」
ララ「え・・・?」
アイビー「私が実家に支援を求めた時にパパから勘当されちゃったのは知ってるよね?ショアの公園で途方に暮れていたときにたまたまローガンが通りかかって・・・助けてくれたの。モデルを引退するちょっと前。」
ララ「・・・・。」
アイビー「そのときにローガンが色々相談に乗ってくれたの。それで一緒に暮らそうって言ってくれて・・・。」
アイビー「私はアダムと二人で田舎に引っ越そうと思ってたんだ。でもローガン、ちょうど家政婦のバイトが辞めるから代わりに家のことをやってくれたら助かるって言ってくれて。」
ララ「・・・・。」
アイビー「正直私も、知らない土地で一人でアダムを育てるなんて心細かったし・・・ローガンからの申し出は嬉しかった。」
アイビー「もちろんララのことを考えなかったわけじゃない。私も悩んだよ。でも・・・まだ小さいアダムを抱えてるあの頃の私には、ローガンからの申し出は一筋の希望だったの。」
ララ「(・・・私が一人でこの子を育てている間・・・ローガンはアイビーと・・・・。)」
アイビー「でもねララ、今のローガンには私じゃダメなの。」
ララ「 ? 」
アイビー「ずっと3人でうまくやっていけてたんだけど・・・この前ショアに帰ってからずっと様子がおかしいの。」
アイビー「ララ、ショアでローガンに会ったでしょう?」
ララ「・・・・ええ。」
アイビー「たぶんそれが原因だと思う。ローガン、ショック受けてるんだと思うんだ。」
ララ「(ショックって・・・アンドレアのこと?)」
アイビー「ララがジーンと結婚して子供を産んだって・・・私にも言ったけど・・・。」
ララ「・・・・。」
アイビー「あれって嘘だよね?」
アイビー「ララを責めるつもりはないし、ララが嘘ついた気持ちもよくわかるよ。」
ララ「・・・・。」
アイビー「でもローガンは・・・自分でも自覚してないと思うんだけど、やっぱりショックだったんだと思う。じゃなかったらあんなに荒れた生活送らないよ。」
ララ「荒れた生活って・・・?」
アイビー「毎晩のように飲んで帰ってくる。仕事も忙しいから、ほとんど寝てないし・・・。ここ数日は少しセーブしてるみたいだけど・・・。」
ララ「・・・・。」
アイビー「お願いララ。ローガンにもう一度会ってほしいの。」
ララ「・・・。」
アイビー「本当のことを言わなくてもいい。ただ・・・3日間だけでいいからあの家で・・・ローガンとアンちゃんと3人で同じ時間を過ごしてほしいの。」
アイビー「本当の・・・家族3人で。」
ララ「(本当の家族・・・。この子の本当の父親と・・・。)」
アイビー「今のローガンには癒しが必要なの。アダムにもそれはできるけど・・・やっぱり私じゃダメなの。」
アイビー「それにねララ。3年一緒に暮らしてるけど・・・ローガンはお兄ちゃんみたいなものだし、私のことも妹のようにしか見てないよ。」
ララ「・・・・もし私が断ったら?」
アイビー「そしたら残りの3日間、ラッキーパームスでの休暇を楽しんでくれていい。ホテルは残り3日分予約してあるし。」
ララ「・・・・あなたはどうするの?」
アイビー「私はそろそろこの街を出ようと思ってる。アダムももうすぐ3歳になるし、一人でも子育てできると思うから。」
ララ「・・・ここを出てどこへ行くつもり?」
アイビー「まだ決めてないけど・・・ローガンとはもうこれ以上は一緒に暮らさないよ。」
アイビー「ララに知られた今一緒に暮らすなんて、そんなことはさすがにできないもん。今までだって・・・ずっと悪いと思ってたよ。」
ララ「・・・・。」
アイビー「いつか言わなきゃって思ってた。今やっと言えたから・・・ちょっとラクになった。」
アイビー「ローガンにはずっとよくしてもらってたの。アダムも時々公園に連れてって相手してくれて・・・。ローガンも変わったよ。昔のローガンからは想像つかないと思う。」
ララ「・・・・。」
アイビー「ローガンはいいパパになると思うな。本当は子供大好きなんだよ。無垢で嘘がないから好きなんだって、この前言ってた。」
ララ「(嘘がない・・・・。)」
アイビー「明日の朝、このダイナーで待ってる。それまでに考えてほしいの。」
ララ「・・・・わかったわ。」
アイビー「ありがとうララ。それから・・・いままで黙っててごめん。」
ララ「・・・まだちょっと混乱してるの。」
アイビー「そうだよね。許してなんて言わない。ホテルでゆっくり考えて。」
ララ「ええ・・・・。」
疲れ果ててぐっすり眠っているアンドレアを見つめるララ。
ゆっくりと窓辺へと近づく。
眼下には昼間賑わっていた遊園地が見える。
ララ「(明日の朝なんて・・・ゆっくり考える時間なんてないじゃないの・・・。アイビーのバカ・・・。)」
ララ「(急すぎて話の展開に頭がついていけないわ。アイビーがローガンとなんて・・・。)」
ララ「(私が一人でアンドレアを育てている間にローガンは・・・。私がどれだけ大変だったと思ってるの?パパとママの援助があったからなんとかやってこれたけど・・・私が一人でどれだけ寂しい思いを・・・。)」
ララ「(そうよ・・・ずっと一人であの子の成長を見守って来たわ。夜泣きがひどくて眠れない日も・・・初めて歩いた日も・・・いつも傍にいたのは私よ。でもアイビーには・・・・。)」
ララ「(それに3年の間に二人になにもなかったなんて嘘に決まってる!キスのひとつやふたつ・・・・本当は身体の関係だってあったかもしれない。アイビーの言うことを素直に信じられる?私を騙してるのかもしれないじゃない!良いように言って利用しようとしているのかもしれないし。)」
ララ「(そうよ!ローガンなんて・・・弱った私を抱いたくせに突き放して逃げた最低野郎よ!勝手に産んだのは私だけど・・・そうさせたのはローガンじゃないの!)」
ララ「(ローガンなんて・・・・!)」
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