翌朝。
目を覚ましたアンドレアが階段を降りてくる。
アンドレア「ママ~。」
アンドレア「わぁっ!」
アンドレア「クリスマスツリーだぁ!」
ララ「おはようアンドレア。目が覚めたのね。」
アンドレア「ママ見て!クリスマスツリーよ!」
ララ「ええ。とっても綺麗よね。」
アンドレア「綺麗!」
アンドレア「サンタさん来たのぉ?!」
ララ「サンタさんならショアのおうちに来てくれたはずよ。」
アンドレア「ここには来ないのぉ?」
ララ「アンドレアはショアからサンタさんにお手紙を出したでしょう?だからショアに来たみたいよ。帰るまで楽しみにしておきましょうね。」
アンドレア「はぁい。」
ララ「このクリスマスツリーはローガンが用意してくれたのよ。」
アンドレア「そうなのぉ?」
ララ「ええ。あなたの喜ぶ顔がみたいって。」
アンドレア「綺麗ねぇ~。」
ララ「ローガンにお礼を言ってね。」
アンドレア「はぁい!」
ララ「お仕事中だけど声をかけてみたら?ローガンも早くあなたの喜ぶ顔がみたいはずよ。」
アンドレア「うんっ!」
ララはキッチンへと戻っていく。
アンドレア「ローガン~。アンちゃんだよ~。」
ドア越しにアンドレアが声をかける。
ドアが開いてローガンが顔を出す。
ローガン「起きたのか。おはようアンドレア。」
アンドレア「おはよう!あのねぇ、クリスマスツリー見たのぉ。」
アンドレア「すごぉく綺麗ねぇ~!ローガンが準備してくれたって、ママから聞いたのぉ。」
ローガン「ああ、お前のママと一緒にな。」
アンドレア「アンちゃんクリスマス大好きなのぉ!」
ローガン「そうか。その顔がみれたから俺は満足だよ。」
アンドレア「ありがとうローガン!」
抱きつくアンドレアを優しく包み込む。
アンドレア「アンちゃんローガンのこと大好き。」
ローガン「ああ。俺もだよ。」
アンドレア「本当?」
ローガン「ああ、もちろんだ。」
アンドレア「ローガンあのねぇ。アンちゃん、サンタさんにお願いしたのぉ。」
ローガン「そうか、なにをお願いしたんだ?」
アンドレア「パパ!」
ローガン「パパか・・・。」
アンドレア「ママがね、ショアのおうちにサンタさん来てくれたって言ってたのぉ~。でもね、プレゼントはきっとショアにはないのよ?」
ローガン「・・・どうしてだ?」
アンドレア「だってローガンはここに居るから。」
アンドレア「ローガンはアンちゃんのこと大好きよね?」
ローガン「ああ。」
アンドレア「ローガン、アンちゃんのパパになってくれない?」
ララ「アンドレア!」
ララ「あなた・・・ローガンになんてことを・・・。」
アンドレア「ママ?」
ララ「ほらっ・・・ローガンも困ってるじゃない。」
震える声でララが否定する。
ララ「ごめんなさいローガン。この子の言ってることは気にしなくてい・・・。」
ローガン「ララ。」
遮るように名前を呼びローガンが立ち上がる。
ローガン「俺の子だよな?」
ララ「え・・・・?」
ローガン「アンドレア。」
アンドレア「なぁにぃ?」
ローガン「お前のママと話があるんだ。返事はあとでもいいか?」
アンドレア「うんっ。きっとよぉ?」
ローガン「ああ。いい子だ。」
立ち尽くしたまま涙を流すララの傍へと駆け寄る。
ローガン「ララ。」
ララ「違うの・・・・そうじゃないのよ。」
ローガン「いいんだ。」
ローガン「話してくれるな?」
ララ「・・・・。」
震える肩にそっと触れると、ララの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
朝からアイビーは店の掃除をしている。
マスター「そんなのやらなくてもいいって言ったじゃない。」
アイビー「だって今日はすっごく汚れてるから気になっちゃって。」
マスター「確かに昨夜は大勢客が来たし遅くまで騒いでいたから、いつもよりも店が汚れちゃってたわね・・・。」
アイビー「そうですよ。それに今夜もお店は開店するし、早めに掃除しないと間に合わないですよ?」
突然カウンターに置いてあったスマホの着信音が鳴り響く。
アイビー「鳴ってますよ。」
マスター「ええ。今出るわよ。」
のんびりとした足取りでマスターがカウンターへ駆け寄る。
マスター「あら。切れちゃったわ。」
アイビー「マスターのじゃないですよね?」
マスター「昨夜の客の忘れ物よ。」
アイビー「じゃあ今のは忘れ物した本人かな。今頃気付いてきっと困ってるのかも。」
マスター「たぶんね。」
アイビー「かけ直さないんですか?」
マスター「きっとあとで取りにくるでしょ。うちは一見さんお断りだから常連しかいないし、すぐにここって気付くわよ。」
アイビー「まぁ、確かにそうですね。」
マスター「ねーアダム~。」
アダム「あい!」
ローガン「ジーンさんと結婚してるって話は?」
ララ「・・・・。」
ローガン「やっぱり嘘なんだな・・・。お前が指輪しないわけないと思ったよ。」
ララ「・・・・。」
ローガン「ショアで暮らしてるんだよな?」
ローガン「お前・・・一人であいつを育ててるのか?」
ララ「実家の両親と・・・。」
ローガン「・・・・。」
ララ「私一人でなんて到底無理だったわ・・・・。」
ララが指先をぎゅっと強く握る。
ローガン「そうか・・・・。」
ローガン「いままで・・・大変だっただろうな・・・。」
ララ「あなたは・・・・いつから気付いてたの?」
ローガン「お前が来た初日かな・・・。」
ローガン「最初はまさかと思ったけど・・・日に日にその疑問が確信に変わっていった。」
ララ「・・・・。」
ローガン「だってあいつ・・・俺の小さい頃にそっくりだぞ。」
緊張が解けてララが小さく笑った。
ローガン「まさかこの俺に子供がいたなんて・・・数日前じゃ考えられなかった話だ。」
ララ「・・・いままで・・・・黙っててごめんなさい。」
ローガン「いや・・・・。当時俺に話してたら・・・きっとあいつは今頃この世に産まれてないだろ・・・・。」
ララ「・・・・。」
ララ「あの子はとてもいい子に育ってくれたわ。私の宝物なの。」
ローガン「・・・・。」
ララ「産んだことは後悔してないわ。」
ローガン「ララ・・・・今更だとは思うが、俺にも父親らしいことをさせてほしい。」
ララ「え・・・?」
ローガン「養育費とか、今後のことをちゃんと話し合おう。あいつの為にも。」
ララ「・・・・。」
ローガン「今までなにもできなかった分、これからはちゃんと父親らしいことをしたいんだ。」
突然事務所のドアのチャイムが鳴り響く。
ローガンがソファーから立ち上がる。
ローガン「9時か、来客の時間だ。」
ローガン「この続きは今夜、終わってからにしよう。いいか?」
ララ「・・・・コーヒー、用意してくるわ。」
ララが黙ったまま部屋を出ていく。
ララ「・・・・。」
マスター「そろそろいいんじゃない?完璧にしなくてもいいのよ。どうせあと数日したら大掃除することになるし。」
アイビー「わかりました。じゃああとゴミ捨てだけやっておきますね。」
マスター「ええ。お願いするわね。」
マスター「コーヒーでも入れるわね。昨日のケーキも残ってるし。」
アイビー「いいですね!ケーキ食べたいです。」
マスター「アダムはまだ食べられないわよね。クッキーならあるわよ。」
アイビー「よかったねアダム。クッキーあるって。」
アダム「くっきー!」
お店のドアベルが鳴り、開いたドアから冷たい風が入ってくる。
ジーン「すいません、昨夜スマホを忘れちゃったと思うんですけど・・・。」
ジーン「・・・・アイビー?」
アイビー「ジーン・・・・。」
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