ジーン「アイビー・・・いつここに・・・。」
突然アイビーが駆け出す。
ジーン「アイビー!」
ジーン「待ってくれ!」
アイビーの後をジーンが追う。
二階のドアがバタンと閉まり、ジーンがその前に立つ。
ジーン「アイビー!」
ジーン「ここを開けてくれ。話がしたいんだ。」
アイビー「・・・・。」
ジーン「君がいなくなってからずっと探してた。やっと・・・。」
ジーン「やっと見つけたのに!」
アイビー「・・・・。」
ジーン「なんで俺から逃げる・・・?」
アイビー「・・・・。」
ジーン「俺なにか嫌われるようなことした?」
アイビー「・・・そうじゃない。」
ジーン「じゃあなんで・・・っ!」
ジーン「なんでなんだよっ!」
ジーン「頼むよアイビー・・・・。ここを開けてくれ・・・・。」
ジーン「頼むよ・・・・。」
アダム「ママぁ~!」
階段を上がってきたアダムがドアへと駆け寄る。
アダム「ママぁ~~~。」
小さな体を震わせドアの前で泣き出す。
ジーン「(え・・・?)」
ゆっくりとドアが開いてアイビーが出てくる。
アイビー「ごめんねアダム。」
アダム「ママ~。」
アイビー「大丈夫、ここにいるよ。」
アダム「ふぇ~~。」
アイビーに抱きしめられアダムが徐々に泣き止む。
ジーン「アイビー・・・その子は・・・・。」
アイビー「私の子・・・アダムっていうの。」
ジーン「子供って・・・・。(瞳の色も肌も・・・)」
マスター「アイビー。」
二階へと上がってきたマスターが声をかける。
マスター「そろそろ本当のことを話す時よ。」
アイビー「マスター・・・・。」
マスター「この男がこのまま素直に帰るわけないでしょ。」
マスター「時が来たのよ。」
アイビー「・・・・。」
マスター「大丈夫。アダムは私がみてるから。」
アイビー「・・・・わかりました。」
ジーン「・・・・。」
アイビー「ジーン・・・逃げたりしてごめん。今までのこと・・・全部話すよ。」
ジーン「・・・・。」
ジーン「じゃあ・・・血の繋がりのない子供を、産まれてすぐから育ててたの?」
アイビー「最初の3ヶ月はずっと入院してて保育器だったけどね。そのあとはずっと・・・モデルの仕事を続けながら。」
ジーン「そんなの全然・・・。」
アイビー「わからなかったよね。気付かれないように、協力してもらってたから。」
ジーン「協力って・・・他に知ってる人が・・・?」
アイビー「リリィ社長とアンナさん。モデルやってるときはベビーシッターさんも。その人はリリィ社長が紹介してくれた、元モデルさん。」
アイビー「それからディーンとラト、ララも知ってる。」
ジーン「(ララちゃんは、知ってて口止めされてたのか・・・。)」
アイビー「モデルの仕事を続けるのに限界を感じて、引退することにしたの。アダムと二人で生きていくって決めたから。」
ジーン「・・・夢だったんじゃないの?アイビーにとってモデルをやることは。」
アイビー「うん。夢だった。」
アイビー「でももうその夢は叶ったし、私には次の夢ができたから。」
ジーン「次の夢?」
アイビー「アダムが大人になるまで立派に育て上げること。」
ジーン「・・・・。」
アイビー「それにね、約束でもあるんだ。」
アイビー「ミランダさんとの。だからこの夢は絶対に叶えなきゃいけないの。」
ジーン「・・・・。」
ジーン「なんでずっと黙ってた?」
アイビー「ジーンを巻き込みたくなかった。」
ジーン「俺言ったよな?ローリングハイツで。」
アイビー「・・・・。」
ジーン「君の悩みも全部、一緒に背負わせてほしいって。」
ジーン「あの時言ったこと覚えてるか?」
アイビー「覚えてるよ。」
ジーン「なんで頼ってくれなかったんだ?俺たち、愛し合ったよな。俺はてっきりあの時・・・。」
アイビー「ジーンにはジェニファーさんが居るし、この街を離れられないでしょう?」
ジーン「・・・・母さんなら3年前に亡くなったよ。」
アイビー「・・・そうだったんだ?」
ジーン「ああ。君が消えてしばらくしてから。」
アイビー「・・・・。」
ジーン「俺は今デザイナー一本でやっていってる。まぁ、たまに頼まれてスタイリストの仕事も呼ばれることあるけど。」
アイビー「知ってる。雑誌でよくみてるよ。ジーンも夢叶えたんだね。おめでとう。」
ジーン「だからアイビー、あの時のセリフもう一度言うよ。」
アイビー「ダメだよ。」
ジーン「ダメってなんだよ。」
アイビー「私いま一緒に暮らしてる人がいるの。男の人だよ。」
ジーン「・・・恋人なの?」
アイビー「うん。私のこと、支えてくれてる。」
ジーン「・・・・。」
アイビー「この間プロポーズもされたの。受けようと思ってる。」
ジーン「俺の知ってる人?」
アイビー「うん。」
ジーン「誰?」
アイビー「ローガンだよ。知ってるでしょう?ディーンの親友の。」
ジーン「ああ・・・。」
アイビー「だから私のことは忘れて。ジーンには幸せになってほしいってずっと思ってるよ。」
ジーン「・・・・。」
アイビー「今までごめんね。もっと早く言えば・・・こんなに苦しませることはなかったよね。」
ジーン「・・・・。」
ジーンがふいに立ち上がる。
ジーン「もう行くよ。」
アイビー「・・・・。」
ジーン「携帯の番号は変わってないよな。」
アイビー「・・・・うん。」
ジーン「じゃあまた連絡は取れるな。もう着信拒否はしないよな。」
アイビー「ジーン・・・。」
ジーン「ごめん、俺まだ頭の中が整理できてない。また落ち着いたら連絡するから、その時は電話出て。」
アイビー「・・・・。」
ジーン「その頃にはきっと、アイビーのこと祝福できると思う。」
ジーン「じゃあ。」
ジーンが足早に立ち去る。
アイビー「・・・・。」
しばらくしてアイビーがカウンターにいるマスターのもとへと戻ってくる。
アイビー「すみませんマスター。」
アイビー「アダムのこと、ありがとうございました。」
マスター「お安い御用よ。私もたっぷりパワー充電できたわ。」
アイビー「おいでアダム。」
マスターの腕からアダムを引き取る。
マスター「あなた、また嘘をついたのね。」
アイビー「・・・・。」
マスター「時が来たって言ったでしょう?受け入れなさい。」
アイビー「でも・・・。」
マスター「あなたのは優しい嘘なんかじゃないのよ。彼にとっては残酷なだけなの。」
アイビー「わかってます・・・でも・・・・私不安なんです・・・。」
マスター「アダムのことね。」
アイビー「ジーンは私のことは受け入れても・・・アダムのことを受け入れられるかどうか・・・。」
マスター「誰にだって時間は必要よ。あなたと一緒に住んでる彼だって、そうだったでしょう?」
アイビー「・・・・はい。」
マスター「もっと素直になっていいの。あなたはもっと、周りを信用して頼っていいのよアイビー。」
アイビー「私、今でも十分・・・。」
マスター「そういうところよ。」
アイビー「・・・・。」
マスター「それに、あの男があっさり引き下がるような性格じゃないことはあなたが一番よく知っているんじゃない?」
アイビー「・・・・。」
マスター「あなたにはそのくらいがちょうどいいのかもしれないわね。」
アイビー「え?」
マスター「きっとまた来るわよ彼。私もめんどうなことに巻き込まれちゃったわね。」
アイビー「・・・すみません。」
マスター「掃除してくれたからチャラにしてあげる。」
ラッキーパームスの日が傾き始めている。
事務所のドアが開きローガンが出てくる。
キッチンへ入ると人気もなく静かだった。
ローガン「・・・・。」
ローガン「(遅い昼寝でもしてるか。)」
ノックをしてアイビーの部屋のドアを開ける。
部屋は片付いていてララの荷物もない。
ローガン「・・・・。」
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