ブリッジポートには今日も深々と雪が降り積もる。
アイビーは部屋で読書をしている。
その傍らでアダムがおもちゃで遊んでいた。
ふいにポケットのスマートフォンの着信音が鳴る。
ポケットからスマートフォンを取り出す。
画面にはジーンの名前がある。
アイビー「・・・・。」
アイビー「はい。」
ジーン『アイビー?今なにしてる?』
アイビー「本読んでたとこ。」
ジーン『ラッキーパームスの家から出たんだってね。』
アイビー「・・・ローガンに聞いたの?」
ジーン『まぁそんなとこ。ブリッジポートに居るんだろ?』
アイビー「それもローガンが?」
ジーン『いやw 彼はヒントをくれただけ。』
ジーン「今下に居るんだけどさ。」
アイビー「・・・・。」
ジーン『家にあがりたいなんて言わないから安心して。』
ジーン「だからアイビーたちがうちに来ない?嫌ならマスターの店でもいいけど・・・まだオープン前だよな。」
アイビー「・・・わかった。ちょっと待ってて。」
ジーン『うん。』
しばらく待つとコートを着たアイビーとアダムが玄関から出てくる。
ジーン「ごめんな。もうちょっと早い時間に来れればよかったんだけど、仕事の打ち合わせがあって。」
アイビー「ううん。」
アイビー「寒い中待たせてごめんね。」
ジーン「いや、このくらい平気。会えなかった3年に比べればw」
アイビー「・・・・。」
ジーン「寒いだろ。早く車乗って。」
アイビー「うん。」
3人が停めてあったジーンの車に乗り込む。
陽はすでに沈みあたりは暗くなりはじめていた。
すっかり辺りが暗くなったころにジーンの家に到着する。
ジーン「ただいま。」
家に入ると飼い猫のハイジが3人を迎える。
ジーン「ハイジおなかすいたろ?今ご飯にするから。」
ジーンがハイジに声をかける。
ハイジ「ニャ~。」
アダム「ニャンニャン?」
アイビー「ハイジちゃんだよ、アダム。」
アダム「ハイジ?」
ジーン「アイビーよく覚えてたな。」
アイビー「うん。」
ジーン「寒いだろ?今あったかくするから、ソファー座ってて。」
アイビー「ありがとう。」
ジーン「コーヒーでいい?」
アイビー「うん。手伝おうか?」
ジーン「大丈夫だよ。」
アダムはハイジと仲良く遊んでいる。
その姿をみつめるアイビー。
ジーン「すっかり仲良しだな。」
アイビー「うん・・・あんまり動物と触れ合ったことないのに。」
ジーン「そうなのか。」
アイビー「おうち、リフォームしたんだ?随分変わったね。車も。」
ジーン「うん。去年かな。」
ジーン「仕事個人でやってるから、ここを拠点にしてるんだ。たまに打ち合わせで来客もあるからね、一部屋潰したんだ。」
アイビー「そういえば・・・ジーンの部屋、なくなっちゃってるね。」
ジーン「ああ。今は母さんの部屋を寝室として使ってる。」
アイビー「・・・ジェニファーさんのお墓参り、行ってもいい?」
ジーン「もちろん!アイビーが来てくれたら母さん喜ぶよ。」
アイビー「ありがとう。」
ジーン「こちらこそ。いつがいい?近いほうがいいよな。」
アイビー「うん。」
ジーン「明日は?」
アイビー「うん、大丈夫。」
ジーン「じゃあ、明日。迎えに行くよ。」
アイビー「ありがとう。」
ジーン「なんか・・・不思議だな。ずっと会えなかったのに、今はこうしてアイビーがうちにいるなんて。」
アイビー「・・・・。」
ジーン「ローガンくんのプロポーズは断ったんだね。」
アイビー「・・・うん。」
ジーン「このままブリッジポートに住む気はないんだろ?」
アイビー「・・・うん。」
ジーン「次住む街はまだ決めてないの?」
アイビー「・・・ゆっくり考えようかと思ってる。」
ジーン「そっか。」
ジーン「どこに住むか決まったら教えてよ。引っ越し手伝うし。」
アイビー「いいよ・・・。ジーンも忙しいでしょ。」
ジーン「大丈夫だよ。仕事の配分は結構自分で決めれるから。」
アイビー「・・・・。」
ふいにジーンが立ち上がる。
アイビー「 ? 」
どこからかぬいぐるみを持ってきたジーンがアダムへと近寄る。
ぬいぐるみを抱えたまま声色を使ってジーンが話しかける。
ジーン「アダムくん、こんばんは!」
アダム「くましゃん!」
アイビー「ジーン、それどうしたの?」
ジーン「前にこのくまのキャラクターの衣装依頼されたときに作ってもらったやつ。今はハイジのお気に入りなんだw」
アダム「ハイジの?」
ジーン「そうだよ。ぼくはハイジのお友達のクマゴロウ!」
アダム「くまごろー!」
アイビー「(名前・・・w)」
ジーン「ぼくはブリッジポートでハイジとジーンとここに住んでいるんだ。」
アダム「ハイジおともらち!」
ジーン「ハイジはもうアダムくんのお友達なんだね。」
アダム「あい!」
ジーン「ジーンはアダムくんのママとお友達なんだ。」
アダム「ママのおともらち?」
ジーン「そうだよ。アダムくんも仲良くしてくれるかな?」
アダム「あい!」
ジーン「ありがとう!」
アダム「くまごろーもなかよくすゆ!」
ジーン「ははっw もちろん。一緒に遊ぼう。」
アダム「あそぶ!」
いつもは静かな部屋の中に、賑やかな笑い声がこだましていた。
数時間後。
アダムはソファーの横でぐっすり眠っている。
アイビーがソファーから立ち上がる。
アイビー「おなかいっぱいw 片付けるね。」
ジーン「手伝うよ。」
アイビー「ありがとう。」
ジーン「いやw それ俺のセリフだから。」
アイビーが洗い物をしている横で、ジーンが残ったピザを冷蔵庫にしまう。
ジーン「前もこんなことあったよなw」
アイビー「そういえばそうだね。」
アイビー「前乗りでクリスマスパーティーしたときだよね。ジェニファーさんと・・・。」
ジーン「うん。」
アイビー「楽しかったな。あの時。」
突然後ろから抱きしめられ、アイビーが目を見開く。
アイビー「ジーン・・・。」
ジーン「ちょっとだけこうしてていい?」
アイビー「・・・・。」
ジーン「嫌なら逃げてもいいよ。」
アイビー「・・・・。」
強張っていたアイビーの体から徐々に力が抜けていく。
ジーンがゆっくりとアイビーの体をこちらへ向かせて抱きしめる。
アイビー「ジーン・・・。」
ジーン「キスしたい。」
アイビー「・・・・。」
ジーン「逃げないならしちゃうよ?」
アイビーは黙ったままうつむいている。
ジーンの指先がアイビーの頬に触れ自分のほうへ顔を向かせる。
ゆっくりと二人の距離が近づいていく。
アダム「ママぁ~。」
アダムの泣き声で二人の体が離れる。
アイビー「ここにいるよ。」
アダム「ママ・・・。」
アイビー「起きたらいなくてびっくりしちゃったんだね。ごめんね。」
アイビー「大丈夫だよ。ここはジーンのおうちだよ。」
アダム「ジン・・・?」
アイビー「うん。そろそろ帰ろうね。」
アイビー「(さっき・・・キスしちゃいそうだった・・・。私、まだドキドキしてる・・・。)」
ジーン「帰るか?送っていくよ。」
アイビー「うん。ごめんね。」
ジーン「気にしないで。呼んだの俺のほうだし。」
アイビー「色々ありがとう。ピザも、おいしかった。」
ジーン「はじめて頼んだ店だったけど、結構うまかったなw」
アイビー「うん。」
ジーン「また遊びにおいで。」
アイビー「うん・・・。」
ジーン「ていうか墓参り、明日行くだろ?」
アイビー「うん。」
ジーン「じゃあ明日また迎えに行くよ。昼過ぎでいいかな。」
アイビー「うん、お願いします。」
スターライトショア。
街は前日振った雪で白く染まり、温かい日差しが指していた。
マリア「それじゃあ行ってくるわね。」
ララ「は~い。」
洗い物の手を止めずにララがキッチンから返事をする。
マリアが玄関のドアを開けて外へと出る。
ローガン「こんにちは。」
マリア「・・・あら?」
マリア「あなた確か・・・お隣のオリーブさんちの息子さん・・・よね?」
ローガン「はい。ララさんいますか?」
マリア「そういえばララと同級生だったわね。」
ローガン「はい。高校と大学も一緒でした。」
マリア「そうだったわね。ララなら中にいるわ。」
アンドレア「ローガン!」
開いたドアの向こうにローガンの姿をみつけたアンドレアが玄関を飛び出してくる。
ローガン「よぉアンドレア。」
アンドレア「こんにちわぁ!」
マリア「あら、アンドレアのことも知ってるのね。」
ローガン「ええ、まぁ。」
ララ「ローガン・・・?」
アンドレアの声を聞いたララが玄関先に出てくる。
ララ「どうして・・・・。」
ローガン「よぉ。」
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